山の懐で、米は何度も呼吸する
日南町は鳥取県の南西、内陸の山間にある。一級河川日野川の源流域だ。ここで作られる米は、ミシュラン店や五つ星ホテルの食卓に届く。理由は単純で、この土地の条件がそうさせるのだ。
標高400メートルを超える棚田で育つ新屋のひとしずくは、昼と夜の気温差が大きい。夏でも夜間は冷え込む。そうした環境で、米の粒は時間をかけて熟成される。豊富な湧き水は、田を潤すだけでなく、土そのものを整える。神戸市の老舗酢メーカーが、全国の銘柄米を調べ尽くした末に選んだのが、この町のコシヒカリだ。最高の酢を作るために、最高の米が必要だったのである。

届いた米を炊く時、その違いは水加減で感じる。吸水が早く、粒がしっかり立つ。冬の朝、湯気の中で一杯目のご飯を食べると、甘みが口に広がる。これは、山の寒さと湧き水が何ヶ月もかけて米に刻み込んだ味だ。
定期便で、季節を食べ続ける
3ヶ月または6ヶ月の定期便を選ぶと、毎月新しい米が家に届く。秋の新米から始まり、冬、春へと季節が移る。同じ産地の米でも、月ごとに微かに表情が変わる。保存の工夫も必要だ。涼しい場所に立てて置き、開封後は2週間程度で食べ切る。そうすることで、米本来の香りと粒の立ち方が保たれる。

日南町は人口減少の課題を抱える町だが、この米作りは世代を超えて続いている。全国大会の米・食味分析鑑定コンクールでの入賞歴も、その証だ。山間部だからこそ、手間をかけた農法が守られ、結果として良質な米が生まれる。その米を、定期便で季節ごとに味わうことは、この町の風土を台所に迎え入れることでもある。
