盆地の牧場から、晩酌の肉へ
甲斐市は甲府市に次ぐ県内第二の都市だが、市街地の北部に足を向けると、すぐに山岳地帯が広がる。釜無川を挟んで南アルプス市と隣接し、北には茅ヶ岳(標高1704m)がそびえる。この盆地と山々に囲まれた土地で、小林牧場が育てているのが甲州ワインビーフだ。

ワインビーフという名は、飼料にワインの搾りかすを混ぜることに由来する。甲斐市は山梨県の中核にあり、ワイン産地としても知られている。その副産物を活かし、赤身の引き締まった肉に仕上げる。モモブロックは、ステーキとして焼くのが本来の食べ方だ。厚さ2センチほどに切り、塩と黒こしょうだけで、強火の鉄板やグリルにのせる。表面が焦げ、中が温かくなるまで。肉汁が落ちる音が聞こえたら、もう食べ頃だ。
届いた肉を冷蔵庫から出し、常温に戻す時間。焼く前に塩をふって15分置く。その間に、ワイングラスを用意する。甲斐市産のワインを一杯。肉を焼く香りが台所に満ちる頃には、すでに晩酌の時間になっている。
同じ土地の恵みを、別の形で
龍王源水のウイスキーも、この地の水を使った製品だ。龍王という名は、竜王町(現在の甲斐市竜王地区)に由来する。盆地の地下水が、ミネラルを含んで湧き出す。その水でつくられたウイスキーは、ロックで飲むと、甲斐市の地層の味わいが口に広がる。ワインビーフの焼き上がりを待つ間に、一杯。肉と酒が同じ土地から来たことを思いながら。

甲斐市産のスパークリングワインは、食卓をもう一段階上げる。赤ワインではなく、スパークリングの爽やかさが、焼いた肉の脂を切る。家飲みの時間を、少し特別にする。
台所に届く、盆地の循環
甲斐市の返礼品は、派手さより、その土地の産業と水脈がどう結びついているかを示す。ワインビーフは、ワイン産業の副産物を活かした畜産。ウイスキーと水は、地下水という共通の資源。スパークリングワインは、地元の葡萄と技術。
どれも、盆地で育ったものが、家の食卓に着地する。冷蔵庫から肉を出し、グラスにワインを注ぎ、焼く。その一連の動作の中に、甲斐市の風土が詰まっている。