山と海に抱かれた町の米
朝日町は富山県の東端、日本海に面しながら南東では北アルプスと長野県白馬村に隣り合う。古くは北陸街道の宿場町として栄え、今も泊地区を中心に町並みが息づいている。この地形が、米と海の幸をもたらす。
推し一品は令和7年産こしひかり 9kg。クリーンみず穂という農業法人が育てた米だ。朝日町の農業は米を軸に、アスパラガスや金糸瓜、柿といった野菜・果樹と組み合わさっている。だが米こそが、この町の食卓の中心にある。

冬季は日本海の寄り回り波が町を襲う厳しい季節だが、その同じ海が、春から秋にかけて田んぼに水をもたらす。山からの雪解け水が笹川や舟川といった河川を通じて流れ込み、平野を潤す。その水で育った米は、粒が立ち、炊きたての香りが違う。9キロという量は、一人暮らしなら2ヶ月弱、家族なら1ヶ月強の食卓を支える。毎日の朝ごはん、昼の弁当、夜の一杯のご飯——季節が移ろう中で、同じ町の米を食べ続けることは、その土地とのゆるやかな関係を作る。
冬の日本海、蟹の季節
朝日町の漁業は、宮崎漁港を中心に営まれている。日本海の冬は、本ズワイガニの季節だ。香箱蟹の船上漬け 3杯は、愛場商店が手がける。香箱蟹とは、本ズワイガニのメスの呼び方。身は小ぶりだが、内子(卵巣)と外子(卵)を持つ季節限定の蟹で、濃厚な味わいが特徴だ。

「船上漬け」とは、漁から帰った船の上で、獲れたての蟹をすぐに漬け込む手法。鮮度が命の蟹だからこそ、陸に上がる前に塩漬けにすることで、風味を閉じ込める。届いた時、甲羅を割ると、内子の濃い黄色が見える。そのまま食べるもよし、温かいご飯の上にほぐしてのせるもよし。冬の夜、湯気の立つ茶碗に蟹をのせれば、日本海の季節が食卓に着く。
朝日町は、北陸街道の宿場として人と物が行き交った町だ。今、その町から届く米と蟹は、古い交易路の記憶を、家の食卓に運ぶ。
