冬が長い村の、素朴な甘さ
東成瀬村は秋田県の南東端、奥羽山脈の麓にある。積雪が2メートルを超え、5ヶ月も雪に閉ざされる特別豪雪地帯だ。そういう土地では、菓子も自ずと素朴になる。保存がきき、手間をかけずに作れて、茶請けになるもの。あずきでっちは、そうした村の台所の知恵が形になった一品だ。

米を粉にして、小豆を合わせた和菓子。名前の「でっち」は、東北の方言で「作ったもの」「手作りのもの」を指す。派手さはない。だが、冬の午後、温かい番茶を淹れて、この菓子を一つ口に入れると、米の素朴な香りと小豆の甘さが、ゆっくり広がる。雪の中で過ごす日々の中で、こういう菓子が何度も食卓に上がってきたのだろう。
村は「学力日本一の村」として知られ、住民アンケートで合併を選ばず、独立の道を歩んできた。人口は2400人余り。成瀬川に沿って20の集落が点在し、それぞれが自分たちの暮らしを守ってきた。そうした小さな村の、小さな菓子職人たちが、今もこの菓子を作り続けている。
届いて、食べるまで
300グラム×2個という分量は、一人暮らしや少人数の家庭にちょうどいい。開けたその日は、表面がしっとりしている。翌日、翌々日と日が経つにつれ、米の風味がより深くなる。冷蔵庫に入れれば、さらに日持ちする。朝食の後、仕事の合間、夜の読書の傍ら。毎日少しずつ食べるのに向いた菓子だ。
栗駒国定公園を擁し、須川温泉や栗駒山の登山口を抱える村。訪れる人も多い。だが、この菓子は観光客向けの華やかさを狙ったものではない。村の人たちが、冬を越すために作ってきた菓子。その素朴さこそが、この土地の本当の顔だと思う。
