盆地に降り積もる、冬の白さ
秋田県の北東端、青森と岩手に挟まれた鹿角市に入ると、まず目に入るのは山々だ。八幡平、五ノ宮嶽、秋田焼山——市域の大部分を占める山々が、盆地を抱き込むように立ち上がっている。その中心、花輪盆地は米代川の流域で、ここに市街地が形成され、稲作が営まれてきた。
冬は厳しい。年平均降雪量は579センチ。八幡平地区では特別豪雪地帯に指定されるほどだ。気温は12月から2月にかけて氷点下が続き、-20℃近くまで下がる。こうした寒冷な気候が、米の味を決める。
鏡田のあきたこまちは、この盆地で育つ。昼夜の気温差が大きく、日照時間が限られた環境で、稲は時間をかけてゆっくり実を結ぶ。冬の準備として、秋に刈り取られた米は、その後の長い冬を経て、春の食卓に届く。粒立ちが良く、甘みが引き出された米だ。炊きたての湯気の中で、盆地の冷たい空気を思い出させる一杯になる。

地熱が湧く、山の懐
花輪盆地から外れると、山勝ちな地域が広がる。そこを流れる河川には瀑布も見られ、茶釜の滝は日本の滝百選に選ばれている。そして、この山々の所々には地熱地帯が存在する。秋田焼山の名が示すように、火山性の地形が複数の温泉を生み出してきた。

八幡平温泉郷は国民保養温泉地に指定され、後生掛温泉、蒸ノ湯温泉、湯瀬温泉、大湯温泉が点在する。大沼地熱発電所も立地し、地熱はこの町のエネルギーそのものだ。温泉宿泊クーポンで選べる旅館の露天風呂に浸かれば、山の地下から湧き上がる湯の温もりが、冬の疲れを溶かしていく。

米と酒、盆地の恵み
花輪盆地はまた、果樹栽培の盛んな地域でもある。リンゴ、セイヨウナシ、サクランボ、モモ、ブルーベリーが秋田県内の主産地として知られている。特にモモは、鹿角の農家が出荷時期を遅くして、10月中まで出荷を続ける「北限の桃」として売り出されている。
こうした盆地の米と、山々の清水から生まれるのが、地元の酒だ。千歳盛の飲み比べセットは、鹿角に伝わる物語を300ミリリットルの小瓶に詰めたもの。晩酌の時間に、盆地の冬の静けさと、山の湿った空気を思い出させる。
寄付は、この町の風土そのものへの投資だ。盆地の米、山の湯、そして静寂。それらが家に届く。
