坂の町で、米が育つ理由
五戸町は坂が多い。総面積の半分以上が森に覆われた、内陸の町だ。年間平均気温は9.6度。冬は深く、最深積雪は90センチに達する。こうした厳しい気候と地形の中で、この町の農業は営まれている。
農用地は4,630ヘクタール。決して広大ではない。だが、限られた土地だからこそ、丁寧に向き合う農家の手がある。まっしぐらの玄米は、そうした風土の中で育った米だ。

玄米で届く。これは、米の本体を家に迎え入れることだ。精米の手間は自分でする。あるいは、玄米のまま保存して、季節ごとに精米所に持ち込む。そうすることで、米は鮮度を保つ。冬の間、坂の町の雪のように静かに、台所の片隅で眠る。春先に精米すれば、新しい季節の食卓に、新しい米が着地する。
粘りのある米。ご飯として炊けば、一粒一粒が立つ。味噌汁に入れても、おにぎりにしても、その粘りが食べ手の口に残る。冬の朝、温かいご飯を前にして、この米の存在を感じる。それは、五戸町の坂と森、そして農家の季節の手当てが、家の食卓に着地した瞬間だ。
玄米で、季節を引き継ぐ
20キログラム。一人暮らしなら数ヶ月分。家族がいれば、冬から春へ向かう時間を共にする量だ。玄米は、白米より日持ちがする。冷暗所に置けば、新米の季節から初夏まで、その風味を保つ。

五戸町の冬は長い。その間、毎日の食卓を支える米。坂の町の農家が、限られた土地で丁寧に育てた米が、家に届く。それは、返礼品ではなく、季節の手当てそのものだ。
