夏泊半島の海が、帆立を育てる
青森県の東津軽郡、夏泊半島。ここは帆立の産地として知られている。養殖ホタテの生産量は日本一だ。私がこの町を訪ねるたびに感じるのは、海と人の距離の近さだ。小湊漁港、浪内漁港、茂浦漁港——町には八つの漁港がある。人口一万に満たない町に、これだけの港が点在するのは、この海がそれほど豊かだからだ。
冬から春にかけて、浅所海岸にはハクチョウが飛来する。国の特別天然記念物に指定された渡来地だ。その同じ海で、帆立は静かに育つ。冷たく、清い水。夏泊半島を囲む海の環境が、帆立の身を引き締め、甘みを深くする。
平内の冷凍帆立が届いたら、まず解凍の時間を惜しまない。冷蔵庫でゆっくり、一晩かけて戻す。そうすると、身がふっくらと甦る。フライパンでバターを溶かし、塩をひとつまみ。帆立を並べて、両面をさっと焼く。焦げ目がついたら火を止める。その瞬間の香りが、夏泊半島の海を思わせる。

帆立は、炊き込みご飯にも、味噌汁にも、パスタにも向く。小さなベビーサイズなら、そのまま串に刺して焼いても、スープに浮かべても良い。冷凍だからこそ、季節を選ばず、必要な分だけ取り出して使える。台所の常備菜として、この町の海の恵みが、いつでも手の届く距離にある。
小さな町の、大きな産業
平内町は江戸時代、黒石藩の飛び地だった。その後、小湊町として町制を敷き、昭和三十年に東平内村、西平内村と合併して、今の平内町になった。歴史の中で何度も形を変えてきた町だが、変わらないのは、この海との付き合い方だ。
帆立貝柱と小ぶりなベビー帆立の二種セットなら、食べ方の幅がさらに広がる。貝柱は、その甘みと食感を活かして、シンプルに塩焼きか、バター炒めで。ベビーサイズは、丼の具に、炊き込みご飯に、あるいは子どもたちのおやつにもなる。同じ帆立でも、サイズと調理法で、食卓の表情が変わる。

夜越山スキー場、椿山の自生地、白鳥の飛来地——観光の顔も多い町だが、この町の本質は、やはり漁業にある。小さな漁港から出た帆立が、日本中の食卓に届く。その営みが、平内町という町を支えている。
