山と水が育てる赤牛の肉質
熊本県の南部、球磨川が東西に流れる山村・球磨村。村域の九割が山林という地形の中で、赤牛が育つ。赤牛とは、熊本の在来種である褐毛和牛のこと。黒毛和牛ほど脂肪が厚くなく、赤身が主役の肉質だ。
私がこの村を見ると、日本三大急流の一つ・球磨川の清冷な水と、山あいの草地が思い浮かぶ。そうした環境で育つ赤牛の肉は、脂肪が控えめで、赤身の風味が立つ。焼いた時に肉そのものの味わいが前に出る——それが赤牛の特徴だ。
球磨の赤牛・切り落としは、容量を選べる返礼品。一キロか五百グラムか、家の冷凍庫と食べるペースに合わせて選べる。切り落としという形態は、調理の自由度が高い。すき焼きの鍋に入れるもよし、炒め物に使うもよし、煮込みに落とすもよし。赤身が主体だから、加熱しても硬くなりにくく、むしろ火を通すことで肉の香りが引き出される。

食卓に着地する、赤牛の使い方
冷凍で届いた肉を、夜の支度の時間に冷蔵庫に移す。朝には解凍が進み、昼食時には調理できる状態になっている。そうした日常の時間軸の中で、赤牛の切り落としは活躍する。

秋口、野菜が甘くなる季節には、玉ねぎ、人参、牛蒡を炒めて、赤牛を加える。脂肪が少ないから、野菜の甘さが邪魔されず、むしろ肉の赤身の香りが野菜を引き立てる。冬には、大根や白菜と一緒に鍋に入れ、塩辛い出汁で煮込む。赤身の肉は、そうした素朴な調理法の中で本領を発揮する。
赤牛のランプステーキは、別の選択肢だ。ランプは腰から腿にかけての部位で、赤身が濃く、歯応えがある。百五十グラム二枚という分量は、夫婦で一枚ずつ、あるいは家族で分け合う量。フライパンで焼く時、強火で表面を焦がし、中は薄いピンク色に留める。そうして食べると、赤牛の肉質の違いが、黒毛和牛とは別の満足感として口に残る。

球磨村は、二〇二〇年の豪雨で甚大な被害を受けた。その後、村は復興の途上にある。この返礼品を選ぶことは、そうした山村の生業を、家の食卓から支える行為でもある。赤牛の肉が、毎週の夜ご飯に現れる。そうした日常の繰り返しが、遠い山村の畜産農家の手仕事につながっていく。