緑川の流れと、赤身の肉
熊本市の南に位置する嘉島町は、緑川と御船川が流れ込む低地の町だ。古い村の合併で生まれ、1969年に町制を敷いた。人口は1万に満たないが、この町の産業地図は意外に厚い。
2003年にサントリー九州熊本工場が立地し、その後イオンモール熊本がグランドオープンした。熊本市への通勤圏でありながら、農業の手も残っている。メロン、アユ、イチゴ、大豆——季節ごとに出荷される品々が、この町の台所を形作っている。
そのなかで、肥後あか牛の切り落としは、この町の食べ方を最も素直に映す返礼品だと思う。赤身の牛肉。脂が少なく、噛むほどに肉の味が立つ。冷蔵で届いた切り落としを、夜の台所で取り出す。フライパンを熱して、塩をふって焼く。3分もあれば食べ頃だ。

定期便か一度きりか、量も回数も選べる。一人暮らしなら月1回の1kg、家族なら2kg×2回という選択肢がある。切り落としだから、すき焼きにも、丼にも、炒め物にも使える。冷凍保存も効く。台所の現実に合わせて、自分たちのペースで肉を迎える。それが、この返礼品の実用性だ。
工場と農地が隣り合う町で
嘉島町は、大きな産業施設と農業が同じ地平にある珍しい町だ。サントリーの工場見学も行われ、観光客も増えた。だが、この町の本質は、そうした大きな施設よりも、むしろ緑川沿いの田畑と、そこで育つ季節の品にある。

サントリーの生ビールも、この町の返礼品として自然だ。工場が立地して20年以上。町民の多くが、その製品を身近に感じている。350ml缶を選んで、晩酌の相棒にする。肥後あか牛を焼いた夜に、冷えたビールを傾ける。それは、この町で暮らす人たちの、ごく普通の食卓の風景だ。

小さな町だからこそ、返礼品は『何が届くか』ではなく『どう食べるか』まで見える。肉も、ビールも、この町の人たちが日々選んでいるものたちだ。