島の台所に、本マグロが届く
新上五島町は五島列島の北東に位置する、中通島と若松島を主島とする町だ。周囲には有人島5島、無人島60島を抱える。この海の環境こそが、返礼品として届く本マグロの正体を決めている。
五島産の養殖本マグロは、赤身と中トロの詰め合わせ。冷蔵で届く鮮度が特徴だ。解凍の手間がなく、箱を開けたその日に食卓に乗せられる。私が想像するのは、夜の食卓。薄く切ったマグロを醤油皿に浸して、白いご飯の上に乗せる。島の漁業が育てた身の質感——引き締まった赤身の歯応え、中トロの脂の乗り具合——が、家の食べ方を変える。

新上五島町の産業は漁業が中心だ。旋網漁業、定置網漁業でアジ、サバ、イカ、キビナゴ、アゴ(トビウオ)、タチウオなど多様な魚を扱う。その中で養殖マグロは、町の海の深さと流れの速さを活かした、比較的新しい取り組みだ。
出汁の島の、もう一つの顔
同じく返礼品に含まれるアゴ出汁茶漬けは、この町の食文化をもう一つの角度から見せる。アゴはトビウオの別名。五島列島ではこの魚を干して出汁を取る伝統がある。茶漬けのセットは5種×2で、毎日違う味わいを試せる。朝食に、あるいは夜遅く帰った夜中に、温かいご飯にかけて食べる。出汁の香りが立ち上る瞬間、その家の台所は一瞬で島の漁港に繋がる。

町の農業加工品には五島うどん、かんころもち、豆ようかん、椿油、焼酎がある。これらは季節の手当てや保存食として、島の暮らしに根ざしたものだ。だが返礼品として家に届く時、それらは単なる「特産品」ではなく、その町の海と人の営みを食卓で再現する道具になる。
海流が決める、味わいの深さ
新上五島町は長崎県の南松浦郡唯一の自治体となった。2004年の合併で、かつての有川町、上五島町、若松町、新魚目町、奈良尾町が一つになった。それぞれの地域は「郷」という単位で今も呼ばれ、昭和の大合併以前からの地名を守り続けている。
この町の返礼品を選ぶ時、私は寄付額よりも、その品が何を運んでくるかを考える。本マグロは、島の漁業者が毎日向き合う海の環境そのものだ。冷たい海流、潮の流れ、季節による水温の変化——それらすべてが、身の質に刻まれている。茶漬けのアゴ出汁も同じ。干したトビウオの香りは、この島で何百年も続いてきた食べ方の記憶だ。
家に届いた時、それは単なる食材ではなく、五島列島の海と、そこで生きる人たちの手仕事の痕跡を、自分の食卓に招き入れることになる。
