佐賀平野の真ん中で、牛を育てる町
上峰町は佐賀市と久留米市のちょうど中間に位置する、平地の多い町だ。私がこの町を見るとき、まず思うのは『通り道』ではなく『生産地』としての顔である。県道22号線沿いには大型の製造工場が立ち並び、農業と工業が共存する風景が広がっている。そしてその農業の中心にあるのが、この地で育つ黒毛和牛だ。
ふるさと納税の返礼品として、上峰町の佐賀牛は全国的な知名度を持つようになった。2020年のランキングでは和牛の切り落としが全国第2位に選ばれたほどだ。だが数字よりも大切なのは、この肉がどう家の食卓に着地するかである。
切り落としという選択肢の現実
佐賀牛の切り落としが届いたとき、あなたの冷凍庫には『すぐに使える肉』が入る。ステーキのような儀式的な調理ではなく、平日の夜に鍋に入れたり、フライパンで炒めたり、焼肉のタレに漬けて焼いたりする。A4〜A5という等級は、脂の入り方が安定していることを意味する。切り落としという形状は、その脂が全体に散らばるから、どの部位でも同じように火が通る。

容量と配送回数が選べるのは、家族の人数と季節の食べ方を想定した設計だ。冬は鍋が増え、夏は焼肉が増える。その変化に応じて、2kg、1.5kg、1kg、600gから選べる。定期便ではなく単発で、必要なときに必要な量が届く。これは『返礼品』というより『家の食べ方に合わせた食材の配置』に近い。
米と海老、この町の食卓の周辺
上峰町の返礼品を見ると、牛肉だけでなく米と海老が並ぶ。さがびよりは特A評価を16年連続で獲得した佐賀県産米だ。この米は、牛肉と同じ佐賀平野で育つ。白米か無洗米か、発送月を選べるのは、家の米の消費ペースを知っている人の設計である。

神むきエビは、冷凍のブラックタイガーだ。むき身で届くから、解凍してすぐに炒め物や汁物に入れられる。牛肉の脂っこさの後に、海老の淡白さが食卓に必要になる季節がある。その時間差を、返礼品の組み合わせで埋める。
上峰町は、ふるさと納税の全国ランキングで上位に名を連ねる町だ。だがそれは『人気だから選ぶ』のではなく、この町の生業——平野で育つ牛、米、海老——が、実際に家の食卓で必要とされているからではないか。寄付をするとき、あなたは『この町の食べ方』に投票しているのだ。