山の中で、肉は育つ
土佐町は高知県北部、四国山地のただ中にある。面積の85%が山林。標高300〜500メートルの盆地で、昼夜の寒暖差が大きく、吉野川の源流域という水に恵まれた土地だ。こういう場所で、牛は育つ。
土佐あかうしは、この町の畜産業を支える和牛だ。土佐褐毛和種と呼ばれ、赤身が強く、脂肪が少ない。嶺北ビーフとしても流通している。山の中の農家が、堆肥センターで作られた肥料を使い、環境を整えながら育てている。決して大規模ではない。だからこそ、一頭一頭の手がかかる。
土佐あかうし切り落としは、その牛を家の食卓に届ける最も日常的な形だ。230グラム。夜の支度の時間に、冷蔵庫から出す。脂が少ないから、焦げやすい。強火は避けて、手早く炒める。玉ねぎと一緒に、醤油で。あるいは、すき焼きの鍋に。赤身の牛肉は、甘辛い割り下に映える。食べると、肉の味がはっきり立つ。脂っこくない分、何度も箸が進む。

煮込みと、定期便
煮込み用のサイコロもある。270グラム。これは時間をかける料理向けだ。赤ワインで煮込むビーフシチュー、あるいは牛丼の具。塊ではなくサイコロだから、火が通りやすく、家庭の鍋でも扱いやすい。赤身の牛肉は、長く煮ると繊維がほぐれ、味わい深くなる。

毎月、同じ肉が届く暮らしもある。12ヶ月の定期便だ。一年間、土佐あかうしが家に届き続ける。季節が変わり、食べ方も変わる。冬は鍋、春は焼肉、夏は冷しゃぶ。同じ産地の肉を、季節ごとに食べることで、その土地の四季が台所に入ってくる。山の中の町で、牛がどう育つのか。その時間が、食卓に映る。
土佐町の畜産は、林業や米作りと同じく、この町の基幹産業だ。赤身の強い牛肉は、脂肪肝や高血圧とは別の話。ただ、山の中で、丁寧に育てられた牛の肉が、毎日の食卓に着地する。その現実が、この町への寄付の返礼品には詰まっている。
