山麓の清流が育てる、季節の果実
高野山の麓、富貴・筒香地区は「裏高野」と呼ばれる山間部だ。かつては松茸の産地として知られ、その後1960年代後半から清流を利用したミョウガ栽培が始まった。だが私が注目するのは、その清流が育てる季節の果実たちだ。
わかやま旬のフルーツ定期便は、この町の農業の現在地を最も素直に映している。2月から12月にかけて、まりひめ、桃、ぶどう、みかんが四度にわたって届く。山間部の寒暖差が大きい気候——冬は-10℃を下回ることもある——がもたらす、濃い味わいだ。

届いた果実を手にする時、その重さと色合いから、その季節の高野町の天候が透けて見える。春先のいちごは、冬の厳しさを耐えた甘さ。秋のぶどうは、昼夜の気温差が凝縮した深い味わい。食卓に季節が着地する感覚は、この町の風土そのものだ。
山上の聖地を支える、山麓の酒
高野山は816年に空海に下賜された聖地だが、その周辺の町場を支えてきたのは、観光業と農業、そして地酒だ。鶴梅の完熟と柚子は、和歌山の伝統的な梅酒と柚子酒。晩酌の時間に、山麓の清流と果実の香りが立ち上る。

もう一つ、槙(こずえ)というジンがある。この町で作られた蒸留酒で、山の香りを瓶に詰めたような一本だ。ソーダで割れば、高野山の森の空気が台所に流れ込む。

過疎と高齢化の課題を抱えながらも、この町の農業者たちは季節ごとに果実を育て、醸造業者たちは地酒を仕込み続けている。その営みが、寄付という形で家の食卓に届く。それが、この町とのつながり方だ。
