大根から焼酎へ。坂城の手仕事
坂城町は工業の町だ。竹内製作所をはじめ、機械や電機の企業が集積し、北信地方の経済を支えている。だが同時に、千曲川沿いの段々畑では、果樹と野菜が季節ごとに実をつける。その両立の風景が、この町の顔だと私は思う。
伝承大根焼酎ねずみ大根は、その矛盾を一本に詰めたものだ。中之条だいこん——地元では「ねずみ大根」と呼ぶ——は、江戸時代から坂城で栽培されてきた在来種。辛みが強く、漬物や薬味に使われてきた野菜である。それを焼酎に仕込む。大根の辛さと焼酎の烈さが出会う瞬間、この町の歴史と現在が交わる。

晩酌の時間、湯呑みに注ぐと、鼻を抜ける香りに大根の青さが残る。ロックで飲めば、辛さが舌に走る。水で割れば、その辛さが柔らかくなり、食事の脇役になる。保存も簡単だ。冷暗所に置いておけば、季節を問わず手に取れる。坂城の土地で育った野菜が、焼酎職人の手を経て、あなたの食卓に着地する。その過程の手仕事を、一本の瓶が物語っている。
秋のぶどう、夏の記憶
同じ千曲川沿いで、シャインマスカットも育つ。鈴木果樹園や赤坂果樹園といった農家が、粒の大きさと甘さを競う。シャインマスカットは種がなく、皮ごと食べられる。届いた箱を開けた時、房から粒をもぎ取り、そのまま口に入れる——その瞬間の爽快感は、夏から秋への季節の移ろいを体に教える。

冷蔵庫で冷やしておけば、子どもたちのおやつになり、来客時のテーブルに置けば、会話が弾む。日持ちは限られるが、だからこそ旬を食べる実感がある。坂城の果樹地帯は、北信の気候と千曲川の水を受けて、毎年この季節に同じ仕事を繰り返す。その営みが、あなたの家の食卓に届く。

