段丘が育てた果実の季節
豊丘村は長野県の南部、飯田盆地を南流する天竜川の東岸に位置している。伊那山脈の最高峰・鬼面山を頂点に、天竜川まで西向きに河岸段丘を形成する地形だ。この段丘の中・上段が、昭和40年代から果樹園へと転換されてきた。稲作と養蚕が中心だった時代から、りんご・梨・桃・市田柿へ。気候が温暖で冬の降雪も少ないこの土地だからこそ、そうした転換が可能になった。
梨 幸水は、その転換の象徴だ。段丘の傾斜を活かした水はけと、天竜川からの湿度、そして日中の日射。こうした条件が、甘さと歯ごたえを両立させた梨を育てる。届いた時点では、まだ硬さが残っているかもしれない。冷蔵庫で冷やし、食べる数時間前に出す。切ると、果汁が指に伝わる。その瑞々しさは、段丘の水が梨の細胞に満ちていることの証だ。夏の夜、家族で食べるとき、この梨は単なる果物ではなく、その土地の季節そのものが食卓に着地する感覚を与える。

夏から秋へ、果実の接続
梨の季節が終わると、桃 あかつきが続く。7月下旬から8月初旬の発送予定は、梨と桃が重なる時期でもある。同じ段丘で育つ両者は、土と水を共有しながらも、異なる季節を担当する。桃は、より強い日射を必要とする。その甘さは、梨の爽やかさとは異なり、濃密だ。

豊丘村の農業は、こうした果実の季節を積み重ねることで成り立っている。市田柿、松茸といった特産も、同じ段丘と森の恵みだ。返礼品として届く梨と桃は、その町の営みの一部を、家の食卓に運ぶ。訳あり品であっても、その本質は変わらない。むしろ、形や大きさの不揃いさが、人の手で育てられた果実であることを、より強く物語る。

