川の栄養が米に映る
辰野町は、ホタルの名所として知られている。松尾峡のホタルは東日本随一といわれ、毎年6月には全国から観光客が訪れる。その光景は、かつて製糸業で使われた蚕が天竜川に流れ込み、カワニナが増殖し、それがホタルの食料となって自然増加したという、産業と自然が交差した歴史から生まれた。
この町の米は、そうした川の豊かさと直結している。天竜ほたる米は、天竜川の流域で育つ。ホタルが舞う季節の前、春から初夏にかけて、この米は水を吸い、日中の寒暖差が大きい大陸性気候の中で、粒を詰める。

届いた米を開けると、精米直後の香りが立つ。新しい米ほど、炊きたての湯気に甘さが乗る。朝の食卓で、白い湯気の中に、この町の川の流れを感じることになる。
季節の手当てとしての米
米は、家の食卓に最も頻繁に着地する返礼品だ。だからこそ、どこの米か、どう育ったかが、毎日の食べ方を変える。
辰野町の米は、南北アルプスに挟まれた谷間で、冬は-15℃を下回る冷え込みを経験する土地で育つ。そうした厳しさが、米の粒に凝縮される。保存も簡単だ。冷暗所に置けば、秋から冬、春先まで、その町の季節を食卓に呼び続けることができる。
新米の季節は秋。その後、冬の煮込みや、春の軽い食事まで、同じ米が家の中心にある。ふるさと納税の返礼品の中でも、米ほど長く、深く、家に根付くものは少ない。
