浅間山の裾野で牛を育てる
御代田町の北部には浅間山の裾野が広がっている。この高原の地形が、町の産業を形作ってきた。精密工業の集積、高原野菜の栽培、そして牧畜。私はこの町を、標高と風が産業を選別する場所だと見ている。
古越牧場が育てる信州蓼科牛は、その風土の産物だ。切落しという部位は、一見すると端材のように思われるかもしれない。だが、牛を知る者にとっては違う。複数の部位が混在する切落しは、調理する者の判断を問う。カレーに入れれば、部位ごとの食感が層をなす。炒め物にすれば、火の通り方で肉の表情が変わる。家の台所で、その日の気分と冷蔵庫の中身に合わせて、使い手が肉を生かす。

300グラム単位で2パック、合わせて600グラム。一度に使い切らず、冷凍で保存して、週に2度、3度と引き出す。そうして初めて、この量の良さが分かる。
高原の気候が肉に刻まれる
高原野菜の産地として知られる御代田町だが、その農業の歴史は1960年代、稲作からの転換から始まった。気候と土地が、何を育てるべきかを教えたのだ。同じ論理で、この町の牧場も、浅間山麓の気候風土に適応した牛を育てている。

2キログラムのおまかせセットは、季節や牧場の判断で部位が変わる。春先と秋口では、牛の肉質も異なる。その時々の最良の部位を、牧場が選んで届ける。これは信頼の形だ。

晩酌の相棒として、ヤッホーブルーイングのクラフトビールも届く。長野県産のビールは、この町の工業の側面を映している。精密機械の製造技術が集積した地で、醸造という手仕事も育つ。牛肉を焼き、ビールを傾ける。その時間が、御代田町の産業と風土を、家の食卓に運ぶ。
