盆地の気候が、米の味を決める
佐久盆地は標高700m。冬は氷点下15℃を下回り、夏は日中40℃近くまで上がる。寒暖の差が大きい大陸性気候だ。この気候が、米の粒を引き締める。
千曲川流域に散らばる岩村田、中込、野沢、臼田といった地区は、かつて中山道と佐久甲州街道の交点として宿場町として栄えた。今も農業が町の骨格を支えている。特に水稲は、この地の主要産業だ。
五郎兵衛さんのお米は、佐久を代表する品種。名前の由来は、江戸時代にこの地で新田開発に尽力した人物に遡る。その名を冠した米は、盆地の気候と土が一粒に詰まっている。届いた時点で、すでに秋の盆地の空気を運んでいるような感覚だ。

炊くと、粒が立つ。冷めても硬くならない。朝、昨夜の残りを握ると、手のひらに吸い付くような粘りがある。この米は、毎日の食卓に着地する米だ。おかずを選ばない。塩辛い漬物でもいい、シンプルな味噌汁でもいい。米そのものが主張しすぎず、食事全体を支える。
盆地の米を仕込む、地酒の系譜
佐久には酒造会社が十以上ある。千曲錦酒造、戸塚酒造、古屋酒造店、武重本家酒造、大澤酒造、土屋酒造店、芙蓉酒造、伴野酒造、木内醸造、橘倉酒造、佐久の花酒造——これらの蔵は、盆地で育った米を仕込んできた。
寒竹の手造り吟醸は、その一つ。吟醸酒は、米の心白を磨いて仕込む。盆地の寒冷な気候は、酵母の活動を緩やかにし、複雑な香りを生む。晩酌の時間に、冷やして飲むと、米の甘さと辛さが舌の上で静かに交わる。

千曲錦の飲み比べセットなら、同じ盆地の米から生まれた複数の表情を一度に知ることができる。季節ごと、気分ごとに、どの銘柄を選ぶか。その選択が、佐久という土地を何度も訪れることになる。
米と酒の間に、季節の手当てを
秋、佐久盆地では稲刈りが始まる。同じ時期、水田で養殖された佐久鯉が水揚げされる。これは「水田養鯉」と呼ばれ、秋の風物詩だ。米と鯉。盆地の食卓は、この二つで成り立っている。
米が届いたら、その米で握った飯を、塩焼きにした鯉の脇に置く。酒は冷やして、一口。こうした食べ方は、佐久の家庭で何百年も繰り返されてきた。ふるさと納税の返礼品は、その繰り返しの一部になる。
盆地の気候、千曲川の水、そして人の手が入った棚田や段々畑。これらが一粒の米に、一本の瓶に詰まっている。それを家の食卓に迎えることは、佐久という場所を、季節ごとに思い出すことでもある。
