地層が米を育てる町
糸魚川は、日本の東西を分ける糸魚川静岡構造線(フォッサマグナ西端)が通る、地質学的に特異な場所だ。西を飛騨山脈、東を頸城山塊に挟まれ、姫川がもたらす谷が、その構造線とほぼ一致している。この地形が、米作りの条件を決める。
山からの清冽な水、日本海の湿った空気、そして特別豪雪地帯ゆえの雪解け水。こうした自然条件が、コシヒカリを育てる。糸魚川の米は、5000年前にこの地で産出したヒスイと同じ地層の恵みを受けている。古い地質が、新しい食卓に届く。
推し一品:ひすいの里コシヒカリ
『ひすいの里』という名は、この町の本質を言い当てている。ヒスイ海岸で産出した原石が、5000年前から日本列島全域に運ばれた。その同じ土地で、今、米が育つ。

届いた2kgを開けると、精米の香りが立つ。炊くと、粒が立つ。口に入れると、甘みが後から来る。これは、山の雪解け水と、海に近い湿度が作る味だ。冬の間、雪に覆われた田んぼが春に目覚める時の、その力強さが米粒に詰まっている。
朝食の茶碗に盛ると、おかずは控えめでいい。塩辛い漬物、味噌汁、それで十分。米そのものが主役になる食卓。これが、糸魚川の米の食べ方だ。
海の仕事が返す、もう一つの味
日本海に面した糸魚川の漁港は、市内に7つある。その一つ、能生漁港から上がる紅ズワイガニは、冬の日本海の深さを食卓に運ぶ。紅ズワイガニは、蒸したまま届く。殻を割ると、身が甘い。米と一緒に食べると、海と山の仕事が一つの食卓に揃う。

同じく海の産物、いくら入りサーモン塩辛は、冷凍で届く。解凍して、温かい白米の上に乗せると、塩辛さと米の甘みが交わる。これは、晩酌の肴にもなり、朝食の一品にもなる。保存が効くので、台所に常備しておくと、食卓の急な彩りになる。

米を選ぶ、もう一つの視点
能生米やいちのまいも、同じ糸魚川の土地で育つ。寄付額や容量で選ぶのではなく、どの農家の、どの地区の米を食べたいか。その選び方が、この町の米を理解する道だ。
糸魚川の米は、量ではなく、地層の話だ。
