醸造の町が、米を育てる理由
神崎町を初めて訪れるなら、まず地形を見てほしい。利根川の南岸に位置し、関東平野の中でも特に平坦な水田地帯。江戸時代、この川は物資の大動脈だった。酒や味噌を樽に詰めて江戸へ運ぶ。その繁栄の中で、地元の蔵元たちは気づいていたはずだ——この土地の地下水は、醸造に適した水質だということを。
300年以上続く醸造業が根付いた理由は、単なる偶然ではない。良質な米が育つ同じ条件——水、土、気候——が、酒や味噌の仕込みにも必要だった。つまり、この町の米は、醸造の町だからこそ、丁寧に育てられてきたのだ。
食卓に届く、その町の水と土
JAかとりのコシヒカリは、その歴史の上に成り立っている。令和7年産の新米が、精米で10kg、20kgから選べる。数量が選べるというのは、一人暮らしから家族まで、その家の食べ方に合わせられるということだ。

届いた米を炊く時、水加減に少し気をつけてほしい。この町の地下水で育った米は、吸水性が良い。いつもより気持ち少なめの水で、透き通った炊き上がりになる。朝、ご飯をよそった時に、粒がしっかり立つ。それは、この町の土と水が、米に与えた性質だ。

冬の朝、温かいご飯に味噌汁をかけて食べる。その味噌が、同じ町の蔵で仕込まれたものなら、なおいい。米と塩と麹。同じ水で育ち、同じ水で仕込まれた食べ物たちが、一つの食卓に集まる。それは、ふるさと納税という仕組みを通じて初めて可能になる、小さな町の風土の循環だ。
ふさおとめ、ふさこがねといった品種も選べる返礼品がある。新米先行予約で、その年の出来を一番に味わう楽しみもある。米は、毎年同じではない。気候、水の量、土の状態。すべてが微妙に異なる。だからこそ、毎年この町から届く米を食べることで、その年の神崎町を、食卓で感じることができるのだ。

近代化の中で、手を抜かない
町は2014年に圏央道の神崎インターチェンジが開通し、東京圏との距離が一気に縮まった。それでも、農業の現場では「21世紀農業を見据えた大区画圃場整備による近代的営農経営」が進んでいるという。つまり、効率化と品質の両立を、この町は選んでいるということだ。
米作りは、見た目では変わらない。でも、その背後にある工夫——灌漑、肥料、品種選定——は、毎年進化している。寄付して届く米は、そうした目に見えない手間の結果なのだ。