山に抱かれた谷間の町
埼玉県の西端、秩父盆地の北端に長瀞町はある。不動山、陣見山、宝登山。町を囲む山々の間を、荒川が南北に貫く。その流れが時間をかけて岩を削り、長瀞渓谷となった。国の名勝及び天然記念物に指定されたこの谷間は、「秩父の赤壁」「関東の耶馬溪」と呼ばれる。
町全体が県立長瀞玉淀自然公園に指定されている。つまり、この町に暮らすこと、訪れることは、風景そのものの中に身を置くことだ。人口六千人余り。小さな町だからこそ、自然と人の営みが地続きになっている。
渓谷の宿で、川の時間を過ごす
長瀞を訪れるなら、泊まることをすすめたい。昼間のライン下りやラフティングで川の躍動を感じるのも良いが、夜間、宿の窓から荒川の音を聞く時間こそが、この町の本質に触れる瞬間だ。

長瀞の宿泊施設で使えるクーポンは、町内の対象施設での滞在に充てられる。秋の夜、渓谷を吹き抜ける風。冬の静寂の中で、川の流れだけが音を立てる。そうした季節の移ろいを、宿の中から感じることができる。

岩畳を眺める露天風呂、渓谷を見下ろす部屋。長瀞の宿は、風景の一部として建てられている。寄付をして届くクーポンは、その風景の中に自分を置く権利だ。
小さな町の、大きな自然
長瀞は観光が主な産業だ。年間二百七十万人近い旅行者が訪れる。外国人にも人気が高い。それでも町の人口は変わらない。この矛盾の中に、長瀞という町の特性がある。
町は自然を守ることで、自らを守っている。宿泊施設も、ライン下りの事業者も、すべてが渓谷という舞台の上で営まれている。寄付者が宿泊クーポンを使って町を訪れるとき、その滞在費は、この風景を次の世代に渡すための営みに還元される。
渓谷の宿で目覚める朝。窓の外は、昨日と同じ山並み。だが、その山並みを守る営みは、毎日、静かに続いている。