水運が育てた酒どころ
飯能の酒造りは、江戸時代の木材産業と切り離せない。相次ぐ江戸の火事により、飯能の材木——「西川材」と呼ばれた良質な杉や檜——が入間川や高麗川の水運で10日ほどで江戸に運ばれた。その往来の中で、飯能は商人の町として栄え、やがて地酒の醸造も根付いた。
現在、飯能で酒を造る五十嵐酒造は、その歴史の上に立っている。銘柄「天覧山」は、市内の山の名を冠した地酒だ。外秩父山地に囲まれた飯能の水——かつて材木を運んだ同じ川の水——が、米を仕込む。季節ごとに気温が大きく変わる山間の気候が、酵母の働きを整える。
天覧山の純米酒と純米吟醸は、その土地の時間を瓶に詰めたものだ。純米酒は、晩酌の相棒として毎晩の食卓に。純米吟醸は、少し丁寧な夜に、冷やして、あるいは常温で。どちらも、飯能の水と米と気候が一体になった味わいである。

燗酒の技術が光る
飯能の酒造りは、単に古いだけではない。全国燗酒コンテストで最高金賞・金賞を受賞した酒セットは、その証だ。燗酒——温めて飲む日本酒——は、米の甘さと酸のバランスが試される。冬の夜、湯呑みに注いで、手のひらで温度を感じながら飲む。そのとき、酒の奥行きが初めて見える。

飯能の酒蔵が全国の舞台で認められたのは、江戸時代から続く水と米への向き合い方が、いまも変わっていないからだろう。

飲み手の季節に合わせて
天覧山の豪華飲み比べ6本セットは、春から冬まで、季節ごとに異なる酒を揃えたものだ。純米大吟醸、大吟醸、純米吟醸——それぞれの製法が、米の香りと味わいを引き出す角度を変える。
届いた箱を開けたとき、6本の瓶が並ぶ。ラベルを読み、銘柄の違いを知る。そして、その月の気分に合わせて、一本を選ぶ。冷えた初夏には爽やかな吟醸を。秋の夜長には、燗をつけた純米酒を。飯能の酒は、飲み手の季節に寄り添う。