工場地帯の中で、米を作り続ける理由
邑楽町は自動車や電子機器の工場が集まる産業集積地だ。しかし町の中を歩くと、多々良沼の周辺には今も水田が広がっている。私はこの町を『産業と農の両立を選んだ場所』と見ている。
邑楽町産の米は、そうした背景の中で作られている。品種は「邑むすび」という、ミルキーな食感が特徴の米だ。令和7年産の新米が、5キロ単位で届く。

米作りは季節の手当てが全てだ。春の田起こし、初夏の苗作り、梅雨明けの水管理、秋の刈り取り。多々良沼の水を引き、その年の天候と向き合いながら、作り手たちは毎年同じ作業を繰り返している。工場の生産ラインとは違う、自然のリズムに従う仕事だ。
食卓に着地する、毎日の米
新米が届いたら、まず炊いてみてほしい。邑むすびの特徴は、粒が立ちながらも甘みがある点だ。朝の白飯、昼のおにぎり、夜の丼。毎日食べるものだからこそ、米の質は暮らしに直結する。

この町の米は、工業地帯の中で作られているからこそ、作り手の選択が見える。便利さを求めれば、農地を手放すこともできた。それでも水を引き、土を耕し、毎年新しい苗を植える。その営みが、食卓に届く一杯の飯になっている。
