山と海に挟まれた土地で、牛は何を食べるのか
高萩市は茨城県北東部、太平洋に面しながら西は山地に深く入り込む町だ。市域の85%が山林原野という地形は、単なる背景ではなく、この町の産業と食べ物を決めている。かつて常磐炭田の石炭で栄え、その後は木材やパルプへと産業の軸足を移してきた。そうした歴史の中で、山間部の農業は水稲、肉牛、乳牛、野菜、花へと多様に根付いてきた。
花園牛は、その山間部で育つ黒毛和牛だ。大北川、関根川、花貫川の三つの川が山から海へ流れ落ちる地形の中で、季節ごとに異なる飼料と水に恵まれた環境がある。3ヶ月ごとに3種類の部位が届く定期便という形式は、一度の大量消費ではなく、季節を通じて食べ方を変えながら付き合う肉の在り方を想定している。

A4、A5という等級は数字だが、実際の食卓では、焼肉にする月、すき焼きにする月、煮込みに使う月、というように手仕事が変わる。冷凍で届いた肉を、その時々の気温や家族の食欲に合わせて解凍し、調理する。そうした現実的な付き合い方が、定期便という形に込められている。
山間部の農業が、なぜ牛なのか
高萩の農業は水稲が基本だが、山間部の傾斜地では、稲作だけでは生計が立たない。肉牛の飼育は、そうした地形の制約の中で、家族経営の農家が選んできた選択肢だ。常磐線が1897年に開業し、その後1954年に市制が敷かれるまでの間、この町は鉱業から農業へ、そして多角化へと歩んできた。

花園牛という名前は、その地域の顔を表している。届いた肉を、あなたの台所で、季節に合わせて食べる。それは単なる『高級な肉』ではなく、山間部の農家の手仕事と、その土地の四季が、あなたの食卓に着地する瞬間だ。
