木戸川の水が育てた酒造りの系譜
楢葉町は福島県浜通りのほぼ中央、太平洋に面した町だ。町域の大部分は阿武隈高地の山地で、中央を木戸川が西から東へ流れている。この川の水が、この町の酒造りを支えてきた。
私が推す一品は 楢葉の風・特別純米酒 である。2本セットで届く、720ミリリットルの瓶だ。

2011年3月の原発事故で、楢葉町は警戒区域に指定された。町域のほぼ全域が立ち入り禁止となり、役場機能は会津美里町といわき市に移転した。4年後の2015年9月、避難指示が解除されるまで、この町は人の営みが止まっていた。
酒造りも、その例外ではない。しかし町が戻ってくる過程で、醸造業者たちは少しずつ仕事を再開した。木戸川の水は変わらず流れ、米を育てる土地も戻ってきた。楢葉の風 は、その再開の証だ。特別純米酒という格付けは、米と水と麹菌だけで仕上げた、シンプルで誠実な酒である。晩酌の盃に注ぐたび、この町が選んだ道筋が伝わる。
ゆずの香りに、季節の手当てを見る
同じく返礼品に ならはのゆず里愛 がある。500ミリリットル、2本のセットだ。ゆず果実酒である。

ゆずは秋から冬にかけて実をつける。この町の台所では、冬至の日に湯に浮かべたり、煮詰めてジャムにしたり、酒漬けにして春先まで引き出しに置いておく。ゆず酒は、そうした季節の手当ての一つの形だ。

届いた瓶を開けば、ゆずの香りが立ち上る。ソーダ水で割って冷やして飲むのもよし、温めて湯呑みに注ぐのもよし。冬の夜、家の中で季節を感じる飲み方ができる。
楢葉の風・純米大吟醸酒 も同じく返礼品に並ぶ。こちらは米を磨き、香りを引き出した酒である。特別純米酒とは異なる、華やかな香りの世界だ。
小さな町の返礼品は、どれも少量だ。だからこそ、一本一本が丁寧に選ばれ、飲み手の手に届く。楢葉町に寄付すれば、この町が選んだ酒が家に着く。それは、この町の人たちが、震災後の時間をかけて立て直した営みへの応援になる。