断崖の村で、イカが獲れる理由
普代村は岩手県の北東端、三陸海岸の最も険しい場所にある。海岸部は比高100メートルを超える断崖絶壁がほとんど。砂浜は少なく、海は村に近い。冬は-15℃近くまで冷え込み、降雪量も多い。こういう土地だからこそ、漁業が生業になった。
冷凍スルメイカは、この村の漁場を代表する一品だ。中4~6尾、約1キロ。急速冷凍で鮮度を閉じ込めている。届いたら冷凍庫に入れ、食べたい時に解凍する。刺身で食べるなら、前夜から冷蔵室に移して、ゆっくり戻す。朝食の一皿に、夜の酒の肴に。イカの甘みが、塩辛さとともに口に広がる。

三陸の海は栄養が豊かだ。普代川が山から流れ込み、沿岸の漁場を育てる。イカはその海で育つ。村の漁港は堀内、沢、白井、太田名部、黒崎、弁天と複数あり、それぞれが小さな漁業の拠点になっている。大きな産業ではなく、地域に根ざした営みだ。
塩うにと、牛肉で、季節を分ける
三陸産の甘塩うにも、この村の海の恵みを象徴している。ミョウバン不使用。瓶詰めで、60グラム。冷凍で届く。解凍して、ご飯に乗せる。日本酒の盃に、ほんの一さじ。うにの甘さと塩気が、海の深さを思わせる。

冬の食卓には、いわて牛のしゃぶしゃぶも良い。500グラム、手作りのたれ3種。鍋を囲む季節に、肉を湯に通す。三陸の海の幸と、岩手の山の幸。村の外からも、内からも、食卓に届く。
普代村は小さな村だ。人口は2500人弱。しかし、その海と山は、食べ手の台所まで、確かな距離で繋がっている。
