秋、三陸沖から届く秋刀魚
大船渡の台所は、海と山に挟まれた土地の季節を食べる。九月から十月、秋刀魚の群れが三陸沖に寄る季節になると、港は朝から活気づく。世界三大漁場のひとつに数えられる北西太平洋海域——その南端に位置する大船渡港は、岩手県内で唯一の重点港湾だ。リアス海岸の複雑な地形が生み出す潮流が、栄養豊かな海をつくる。
秋刀魚 約2kgは、その季節の獲れたてを冷蔵で届ける。塩焼きにするなら、内臓まで食べる。大根おろしを添えて、秋刀魚の脂が大根の辛さと出会う瞬間——これが三陸の食べ方だ。二キロあれば、一週間の晩酌の相棒になる。焼いた骨は味噌汁の出汁に。何も捨てない、海の恵みの使い切り方が、この町の台所には根付いている。
米と塩辛い海の組み合わせ
秋刀魚の塩焼きに欠かせないのが、白い米だ。大船渡の周辺地域で育つ銀河のしずくは、七年連続で特A評価を受けた品種。冷めても甘みが残る米は、塩辛い魚の脂を受け止める力がある。朝の握り飯に、夜の茶碗に——毎日の食卓に欠かせない米が、この町の返礼品として選ばれるのは、それだけ地元の人たちが信頼しているからだ。

海の保存食、日常の備え
三陸の海は豊かだが、天候は厳しい。冬の波が高くなれば、漁に出られない日が続く。そうした季節の変わり目に活躍するのが、缶詰三種セットだ。燻製ほたてのオイル漬け、かき燻製、つぶ貝のうま煮——いずれも三陸の海で獲れた貝を、手間をかけて加工したものだ。常温で保存でき、そのまま酒の肴に、ご飯のおかずに。大船渡の台所では、こうした缶詰が「いざという時」だけでなく、日々の食卓の引き出しの中に常備されている。

東日本大震災から十年以上が経ち、この町は港を中心に復興を進めてきた。返礼品として届く秋刀魚も米も缶詰も、その復興の過程で、漁師たちが、農家たちが、加工業者たちが守り抜いた営みの結果だ。寄付は、その営みを支える一つの形になる。
