寒さが育てる、新しい仕事
陸別町は冬、気温が−30℃を下回る。1月の平均気温は−11℃。富士山の観測所に次いで、日本で最も寒い場所だ。この極寒が、町の産業を長く支えてきた。酪農、林業、そして農業。すべて、この気候と地形があってこそ成り立つ仕事である。
利別川が町の中央を南北に貫き、西部は酪農の中心地帯、東部は標高500メートル前後の高原地帯。こうした地理の中で、新しい仕事が始まった。それが天使のジンだ。

北海道産のハーブ、特にトウキを使ったクラフトジン。45度のアルコール度数で、瓶詰めされて届く。寒冷地だからこそ育つ植物の香りが、蒸留の過程で凝縮される。冬の夜、暖かい部屋で、冷たいグラスに注ぐ。氷が音を立てる。北の香りが立ち上る。それは、この町の風土そのものだ。
台所に、季節の手当てとして
小さな町だからこそ、返礼品は単なる商品ではなく、その土地の営みの一部である。500ミリリットルのボトルは、晩酌の相棒になる。ソーダで割れば、食事の前の一杯。ストレートで、冬の夜の静寂の中で。あるいは、カクテルの基酒として、自分の手で新しい味を作る喜びもある。
陸別町の寒さは、観光の売りになっている。だが、それは単なる数字ではなく、毎日の生活の中で人々が向き合う現実だ。その現実の中で、ハーブを育て、蒸留し、瓶に詰める。その手仕事が、遠く離れた家の食卓に届く。それが、ふるさと納税という仕組みの本質だと私は考える。