開拓地の牛、冬の食卓へ
士幌町は十勝北部の平坦地。明治末の入植から百年以上、この土地の人たちは馬鈴薯と麦、そして牛を育ててきた。今、町内には複数の肉牛肥育センターがあり、食肉処理施設も稼働している。つまり、ここは『牛を育てる町』であり、同時に『牛を食べる町』でもある。
しほろ牛の切り落としは、そうした産地の現実を最も素直に映した返礼品だ。赤身の牛肉、400グラム。冬が深まる季節、これを家に迎えると、台所の手仕事が始まる。すき焼きの鍋に、焼肉のタレで、あるいは牛丼に。切り落としという形態は『使い切る』ことを前提にしている。一度に全量を調理する必要はなく、冷凍庫に入れておいて、週に何度か、食卓に牛肉を呼び込む。そういう『季節の手当て』としての肉だ。

十勝の冬は厳しい。気温は零下20度を下回る。そうした季節に、温かい鍋を囲む家族の食卓に、この町で育った牛肉が着地する。それは観光的な『特産品』ではなく、生活の一部である。
定期便で、季節を通す
もう一つの選択肢は、定期便だ。全3回、サーロインとリブロースが届く。これは『一度の食卓』ではなく、『季節を通す』という約束である。春から秋へ、秋から冬へ。その間に、家族の食べ方も変わる。焼肉から鍋へ、鍋からステーキへ。肉の部位が変わることで、調理の手も変わり、食卓の表情も変わる。

定期便という形式は、ふるさと納税の返礼品としては珍しい。だが士幌町にとっては、むしろ自然な選択肢だ。なぜなら、ここは『継続的に牛を育てる町』だからである。
馬鈴薯との組み合わせ
コロッケも、この町の食卓を映している。北海道産の馬鈴薯と牛肉を合わせたもの。冷凍で届き、揚げるだけで食べられる。これは『手間を省く』のではなく、『調理の時間を選べる』という意味だ。朝の弁当に、夜の副菜に、子どもたちのおやつに。馬鈴薯と牛肉、この町の二つの産業が一つの食べ物になっている。
士幌町の返礼品は、派手ではない。だが、その家に届いた時から、その家の食卓の一部になる。それが、開拓地の町からの贈り物の本質だと私は考える。
