毛髪のように流れる水が、この町を作った
音更川、士幌川、然別川。アイヌ語で「毛髪が生ずる」と呼ばれたこの町は、北から南へ流れ落ちる幾筋もの川に支えられている。十勝平野のほぼ中央、ほぼ平坦な地形の中を、水が静かに通り抜けていく。その水が肥沃な土壌を作り、長い日照時間と寒暖差の大きい気候が、小麦、豆、ニンジンを育てた。北海道内で最も人口の多い町となった音更は、農業の力で支えられている。
地下から湧く、世界的な温泉
その十勝川沿いに、珍しいモール温泉がある。植物が長い年月をかけて堆積した層を通して湧き出す温泉で、世界的にも稀だ。依馬嘉平が1900年に開湯して以来、この地の象徴となった。十勝川温泉の感謝券は、その湯に浸かる時間を家族で分け合う返礼品だ。冬の厳しさが-25℃を下回る十勝で、地下から湧く温かさに身を委ねる。それは、この町が水と地熱に恵まれていることの証だ。

バターに詰まった、牧場の営み
家畜改良センター十勝牧場は、日本国内で最大規模を誇る。4,092ヘクタールの広さで、酪農の未来を支える種牛が育てられている。その周辺で、よつ葉乳業は1967年に操業を始めた。よつ葉のバターセットは、十勝の牧草地で育った乳牛の乳から作られる。8種類、合計926グラム。朝食のパンに塗る時、晩酌の肴に添える時、その黄色い塊の中には、十勝の広大な牧場と、冬の厳しさを耐えた牛たちの営みが詰まっている。

温泉と宿泊で、町の時間を過ごす
十勝川温泉の宿泊プランは、一夜を温泉地で過ごす時間をくれる。昭和天皇が行幸啓した歴史を持つこの温泉地で、モール温泉の湯に浸かり、十勝の食卓を味わう。町が育てた農産物と、地下から湧く温泉。その両方を身体で感じる時間は、音更という町を最も直接的に知る方法だ。
