甘えびが届く季節、台所の準備
羽幌町は北海道の日本海側、留萌管内のほぼ中央に位置する。札幌から北へ180キロ、国道232号で海沿いに走ると、やがて沖合に天売島と焼尻島が見える。この町の顔は、かつての炭鉱ではなく、今は漁業だ。特に甘えびは日本でもトップクラスの漁獲量を誇る。
いくら醤油漬けの定期便は、この町の海の恵みを最も素直に家に届ける返礼品だ。北海道産のいくらを塩漬けにしたもので、全2~4回の定期便として季節ごとに届く。届いた時点で、すでに食べ方は決まっている。温かいご飯の上に、そのままのせる。醤油の香りが立ち、粒がほぐれる。朝食の白いご飯が、一気に豪華な食卓になる。冷蔵庫に常備しておけば、夜の晩酌の肴にもなる。小分けされた180グラムずつなので、開けたら食べきる。鮮度を保つ現実的な配慮が、この返礼品に込まれている。

羽幌の漁業は、甘えびだけではない。ウニ、ホタテ、ミズダコも獲れる。町の食文化は、これらの海産物を日常の食卓にどう落とし込むかで成り立っている。羽幌えびタコ焼き餃子、天売ガヤ天丼、焼尻タコ揚げ定食——こうした郷土食は、決して特別な日のためのものではなく、漁師の家族が日々の台所で作ってきた、季節の手当てだ。
米と海、小さな町の産業の重ね方
オロロン米ななつぼし10キロは、この町の農業を代表する返礼品だ。オロロン米は羽幌産の米の総称で、ななつぼしは北海道を代表する品種。粒が揃い、冷めても硬くならない。いくら醤油漬けをのせるなら、この米の白さと粘りが引き立つ。米と海産物は、羽幌の食卓では常に一対だ。

町の産業は、漁業と農業が地続きで営まれている。グリーンアスパラガス、ねばり長芋、羽幌メロンも作られ、焼尻島ではめん羊の畜産も行われている。小さな町だからこそ、一つの産業に依存しない。かつて炭鉱で栄えた時代の人口は3万人を超えていたが、閉山後は過疎化が進んだ。今、6600人余りの町が生き残るために選んだのは、海と山の両方を活かす道だ。
天然秋鮭のいくら醤油漬けも、この町の海の季節を映す。秋に獲れた鮭から取ったいくらは、冬の食卓を彩る。選べる内容量という仕様は、家族の人数や食べ方に合わせて、自分たちの台所の現実に合わせて選べるということだ。ふるさと納税の返礼品は、時に『豪華さ』で選ばれるが、羽幌の海産物は、むしろ『日々の食べ方』で選ぶべき品だ。
天売島と焼尻島を抱く羽幌町は、離島地域の指定も受けている。沖合の島々は、暑寒別天売焼尻国定公園の一部で、海鳥の繁殖地でもある。この町の漁業は、自然と人の距離が近い。漁師たちは、毎日その海を読み、季節を読む。その営みが、食卓に届く。
