海の町が、ビールを醸す理由
乙部町は日本海に面した漁港町だ。渡島半島の西側、檜山振興局の中部に位置し、江戸時代からニシン漁で栄えた。今はイカ、サクラマス、スケトウダラが中心。ウニやナマコの増殖にも手がけている。人口3500余りの小さな町だが、ひやま漁業協同組合の本所がここにある。
そういう町が、クラフトビールを作っている。オトビアンという名のビール。330ml瓶、3種類を4本ずつ、計12本。寄付すると家に届く。

私がこれを推す理由は、ビール自体の味わいもさることながら、この町の水と仕事が、そのまま瓶に詰まっているからだ。山が海まで迫る地形。全体の81%が山林という乙部では、その山々から流れ出す水が、町の産業を支えてきた。漁業も農業も、この水がなければ成り立たない。クラフトビールもまた、その水を主役にしている。地元の麦を使い、地元の水で仕込む。飲み手が口にするのは、乙部という土地そのものだ。
小さな町だからこそ、返礼品は『何が届くか』ではなく『その町の何が家に来るか』で選ぶべきだと私は考える。オトビアンは、その基準を満たしている。
晩酌の時間に、町の顔を知る
届いたビールは、冷蔵庫に立てて保存する。瓶は立てたまま、冷やすのに3時間もあれば十分だ。グラスに注ぐと、香りが立つ。IPAなら柑橘系の爽やかさ。ラガーなら、すっきりとした後味。飲み手は、その一杯の中に、乙部の海岸線を思う。
乙部には温泉も湧いている。館浦、鳥山、緑町の3か所。光林荘の特別室プランは、乙部温泉郷での宿泊。大人2名、1泊2日、2食付き。海を臨む温泉に浸かり、地元の食材を使った食事をとる。その夜、部屋に戻ってオトビアンを開く。そういう過ごし方も、この町の返礼品なら可能だ。

乙部は、観光地ではなく、生業の町だ。漁港であり、農業地でもある。その町が、寄付者に何を返すか。それは『町の日常を、家庭に届ける』ことではないだろうか。オトビアンは、その約束を果たしている。
