奥羽山脈に囲まれた盆地の仕事
高畠町は山形県南東、奥羽山脈に抱かれた盆地だ。冬は特別豪雪地帯に指定されるほど雪が深く、年平均気温は11.2℃。寒暖の差が大きく、冬は氷点下10℃を下回る日も数日ある。こうした厳しい気候が、この町の農業と醸造の質を決めている。
私がこの町を見ると、「農業と工業の調和」という公式の言葉よりも、むしろ「寒冷地の手仕事が育つ場所」と感じる。米作りも酒造りも、気温の振幅が大きいほど、作り手の判断と手が問われる。機械では補えない季節の読み方が、ここでは必須になるのだ。
米鶴の酒——盆地の水と米が出会う場所
米鶴のかっぱ本醸造は、この町で最も象徴的な返礼品だと考える。米鶴酒造は高畠町に根を張った蔵で、地元の米と水を使い、盆地特有の気候の中で仕込みを続けている。

「かっぱ」という名は、この地の民話や風土に根ざしたものだろう。辛口の本醸造は、冬の冷え込みの中で時間をかけて熟成される。届いた瓶を開けば、寒冷地で育った米の香りと、盆地の水が醸した酒の輪郭が感じられる。晩酌の盃に注ぐとき、その一杯は単なる酒ではなく、この町の冬の仕事の結果そのものだ。
有機の米——手が入る農業の現場
高畠町は「有機農業の盛んな町」として知られている。有機JAS認証のつや姫は、その象徴だ。コンクール受賞生産者による米は、化学肥料や農薬に頼らず、土と季節の声を聞きながら育てられている。

有機栽培は、気象の変動に直結する。寒暖差が大きく、降雪量が多い高畠の冬を越した米は、その過程で何度も作り手の判断を受けている。精米されたつや姫を炊くとき、その粒一つが、春の田植えから秋の収穫まで、どれだけの手と目が注がれたかが、食べる側にも伝わってくる。
置賜の果実と、季節の手当て
ラ・フランスとふじりんごの詰め合わせも、この町の顔だ。高畠町三条目地区はラ・フランスの発祥地であり、デラウエアの生産量は日本一。秋から冬にかけて、この町の果樹園から出荷される梨とりんごは、盆地の昼夜の気温差が生んだ甘さと香りを持つ。
届いた箱を開けば、秋の終わりから冬の初めの季節が、そのまま家の食卓に着地する。ラ・フランスの芳醇さは、冷え込む夜の中でこそ引き立つ。りんごは、冬の間、常温で保存しながら、月ごとに味わいが変わっていく。こうした季節の手当てを、返礼品として受け取ることは、高畠の農業暦に自分の家の食卓を同期させることでもある。
高畠ワイナリーの赤ワインも、同じ風土の産物だ。この町で育ったぶどうを醸したワインは、盆地の日照時間(年平均1578.5時間)と寒冷地の気候が生んだ酸度と香りを持つ。晩秋から冬の食卓に、地元産のワインを注ぐことは、その季節の高畠を飲むことになる。