名護湾に背を向けた山地の町
名護市に入ると、まず古生層の山々が目に入る。沖縄本島北部、やんばると呼ばれるこの地域の中心都市は、湾に臨みながらも、背後には八重岳や嘉津宇岳といった四百メートル級の丘陵が連なっている。海と山が近い。その距離感が、この町の産業を形作ってきた。
漁業ではカツオが水揚げされ、農業ではラン、キク、果樹が栽培される。そして何より、この町はビール発祥の地でもある。1957年、沖縄ビール株式会社がここで創業した。後のオリオンビールである。
湾と山が醸す、ひとつの味
オリオン麦職人は、この町で生まれたビールだ。亜熱帯の高温多湿、年間降水量2000ミリを超える気候。そうした環境で、麦を仕込み、水を選び、醸造してきた六十年以上の歴史がある。缶を開けば、沖縄の湿度と塩風が、ほのかに香る。晩酌の時間に、冷えた一本を手にすれば、名護湾の夜景が脳裏に浮かぶ。それは観光ではなく、この町に寄付した者だけが手にする、日常の風景だ。

同じく名護で醸されるシークヮーサーのお酒も、この土地の産物である。シークヮーサーは沖縄の柑橘。龍泉酒造が仕込んだこの酒は、泡盛をベースに、地元の果実の香りを閉じ込めている。ロックで、水割りで、季節ごとに飲み方が変わる。

米と陶、もう一つの選択肢
羽地米は、かつて羽地村だった地域で作られる。沖縄の米は、本土のそれとは異なる。高温多湿の気候が、粒の質感を変える。ひとめぼれという品種が、この風土でどう育つのか。炊き上がった時の香りと、口に入った時の甘さが、名護の気候を物語る。
やちむんのとっくりは、沖縄の焼き物。蓋と触媒石が付いた、酒を注ぐための器である。泡盛やシークヮーサーのお酒を、この陶製の器に注ぎ、ゆっくり飲む。手に取った時の温度感、口に当たった時の質感。それらすべてが、沖縄の職人の手から生まれたものだ。
