丘陵と平野が交わる、果樹の町
赤磐市は岡山市のベッドタウンでありながら、市域の大半が丘陵と山林だ。吉井川が北東部を流れ、その流域の緩やかな傾斜地が、この町の産業を形作っている。果樹栽培が盛んというのは、単なる産業統計ではなく、地形そのものの声だ。春から初夏にかけて、この丘陵一帯は桃とぶどうの花で白く染まり、やがて実をつける。その季節の移ろいが、家の食卓に直結する町である。
白桃の季節、家に届く初夏の重さ
赤磐の白桃は、6月から8月にかけて出荷される。箱を開けた時の香りが、その年の天候を物語る。5~7玉、約1.5キロという量は、一人で食べ切るものではなく、家族で、あるいは知人に配る分量だ。冷蔵庫の野菜室に並べて、毎朝一個、朝食の後に食べる。皮を剥く手の感覚、果汁が指を伝う感覚が、初夏の日常になる。完熟の白桃は、加熱を必要としない。そのまま食べることが、この果実への最大の敬意だ。
夏から秋へ、ぶどうの時間
白桃の季節が終わると、シャイン マスカットの出荷が始まる。750グラム以上という重さは、房ごと食卓に置く喜びを約束する。種なし、皮ごと食べられるこの品種は、家族で房を囲む時間を簡潔にする。冷やして、そのまま手で摘んで食べる。あるいは、冷凍して、シャーベット状にして食べる家もある。ぶどうは、桃ほど日持ちしないから、届いたら数日のうちに食べ切る。その短い季節感が、この町の果樹栽培の現実でもある。

米と酒、丘陵の恵みの別の顔
赤磐市の食卓は、果実だけではない。きぬむすめという米が、この地で作られている。特Aランクの評価を受けた米は、毎日の飯として、果実の甘さを引き立てる。また、利守酒造の純米酒は、この町の水と米から生まれた酒だ。晩酌の時間に、白桃の季節の思い出を酒で温める。そうした一年の循環が、赤磐市という町の食べ方の本質である。

返礼品を選ぶ時は、寄付額よりも、その季節に何が旬かを考えてほしい。春から初夏は桃、夏から秋はぶどう。米と酒は通年で、その季節の果実を引き立てる脇役だ。この町の丘陵地帯で育った食材たちは、岡山平野の一角で、静かに家の食卓に着地する。
