瀬戸内海に面した、三つの町が一つになった風景
瀬戸内市は、2004年に邑久町、牛窓町、長船町が合併して誕生した。岡山県の南東部、岡山市の東隣に位置し、西は吉井川を挟んで千町平野へ、南と東は瀬戸内海に開かれている。市の名前は「瀬戸内海の恩恵を受け、風光明媚で温暖な、穏やかな地域」というイメージから選ばれたという。その言葉通り、この町は海と山、平野と島々が織りなす多層的な風景を持つ。
牛窓地区は「日本のエーゲ海」と称される多島美で知られ、前島や黒島、青島といった島々が瀬戸内海に点在する。江戸時代には朝鮮通信使の寄港地として栄え、本蓮寺に残された漢詩の書軸は、2018年に世界記憶遺産に登録された。一方、長船地区は古くから刀鍛冶の町として知られ、備前長船の刀は全国に流通した。砂鉄「赤目」と、タタラに必要なクヌギ系の木が自生していたこと、そして吉井川と山陽道という交通の便が、この地を刀の一大産地へと導いた。
瀬戸内の気候が育てる、岡山の桃
私がこの町の返礼品を見て最初に目に留まったのは、桃だった。岡山県は全国有数の桃の産地だが、瀬戸内市の桃は、この町特有の風土に支えられている。
岡山の桃 大玉3玉は、夏の盛りに届く。箱を開けた時の香りは、瀬戸内の温暖な気候そのものだ。標高100~300メートルの山林に囲まれながらも、南に瀬戸内海を控えた地形が、昼夜の気温差と適度な湿度をもたらす。その環境で育った桃は、甘さと酸味のバランスが深い。

届いた桃は、冷蔵庫で冷やすのが定番だが、私は常温で少し置いてから食べることをすすめたい。皮をむく時の手の温度で、果肉の香りが立ち上がる。朝食の食卓に一皿、あるいは昼下がりの台所で、ナイフを入れる瞬間の音と香りが、季節を確実に運んでくる。保存は冷蔵で1~2週間が目安だが、食べ頃を見極める楽しみも、この返礼品の魅力だ。
オリーブが根付いた、もう一つの瀬戸内
牛窓地区には、牛窓オリーブ園がある。小豆島と並ぶ日本有数のオリーブ生産地として、この町はオリーブの栽培に力を入れている。瀬戸内海の温暖な気候と、適度な降水量がオリーブの樹に適しているのだ。
有機栽培のエキストラバージンオリーブオイル 3本は、この町のオリーブから搾られた油だ。届いた瓶を開けると、青草のような香りが立ち上る。これは、オリーブの実を早期に収穫し、低温で搾った証だ。

使い方は、仕上げの一滴に限定する必要はない。パンに浸す、サラダにかける、スープの表面に落とす——台所の様々な場面で活躍する。冬の朝、トーストにかけたオリーブオイルの香りは、瀬戸内の陽光を思い出させる。開封後は冷暗所に保管し、3~4ヶ月を目安に使い切るのが理想だ。
虫明のカキと、季節の選択肢
邑久町の虫明地区は、カキの産地として著名だ。蒸し牡蠣 500gは、内閣総理大臣賞を受賞した大粒のカキで、冷凍で届く。冬から春にかけて、解凍して温め直すだけで、磯の香りが台所に満ちる。
瀬戸内市の返礼品は、季節ごとに異なる顔を見せる。春から初夏は桃とブドウ、秋から冬はカキとオリーブオイル。この町の農漁業は、瀬戸内海と吉井川の恵みに支えられ、年間を通じて食卓に季節をもたらす。
返礼品を選ぶ視点
この町への寄付を考える時、高額な旅行クーポンよりも、食材を選ぶことをすすめたい。なぜなら、瀬戸内市の本質は、その風土が育てた農産物と水産物にあるからだ。桃、ブドウ、オリーブ、カキ——これらは、この町の地形、気候、産業の歴史が一つになった結果だ。
届いた返礼品を台所で扱う時、あなたは瀬戸内市の季節を、自分の食卓に着地させることになる。それは、単なる「もらい物」ではなく、この町との関係を、毎日の食事を通じて深める行為なのだ。
