南斜面の米作りが、この町の基盤
東御市は浅間連山を背に、千曲川が流れる盆地だ。東西14.7km、南北16.5km。小さな市だが、地形が仕事を決めている。
南に向いた斜面、年間日照時間2181時間。冬は−15℃を下回る冷涼さ。この気候が、米作りに適した土地を作った。東御市産の風さやかは、そうした条件の中で育つ。約10kgの白米が届く。炊いた時の粒の立ち方、冷めても硬くならない食感——これは土地と季節の手当てが米粒に刻まれた結果だ。

私がこの町を見ているのは、農業が単なる産業ではなく、地形そのものが仕事を規定している場所として。水稲は年4930トン。夏秋レタス、白菜、キャベツ、トマト。どれも冷涼な気候を活かした野菜ばかりだ。
米を仕込む、醸造の手
もう一つ、この町で続いている仕事がある。醸造だ。
クラフトビール アンバーエールは、定期便で4回、24本ずつ届く。オラホビールという事業者が仕込んでいる。ビールは米と同じく、水と気候に左右される。冷涼な東御の水、四季の温度変化——それが麦汁の発酵を支える。

醸造は米作りと似ている。どちらも季節を待つ仕事だ。米は春の田植えから秋の収穫まで。ビールは仕込みから瓶詰めまで、数週間の発酵期間を経る。どちらも人間が手を入れすぎず、自然のリズムに合わせる。その結果が、食卓に届く。
晩酌の時間に、冷えたグラスに注ぐ。アンバーエールの琥珀色。その向こうに、東御の冷涼な夜気が透けて見える気がする。
葡萄と、もう一つの季節
秋には別の仕事が動く。シャインマスカットだ。2026年9月中旬以降の発送。南斜面の日照時間の長さが、葡萄の糖度を高める。1.1kgか3kg、房の数で選べる。
届いた時、房を手に取ると、粒の透明感がわかる。冷蔵庫で冷やして、食べる。種なし葡萄の粒が、口の中で崩れる。甘さの後に、わずかな酸味。これも土地の仕事だ。
東御市は2004年、東部町と北御牧村の合併で誕生した。市名は「東」と「御」の合成。小さな町だからこそ、地形と仕事の関係が見える。浅間山麓の南斜面。そこで育つ米、仕込まれるビール、実る葡萄。すべてが、この町の気候と日照の産物だ。
