盆地の町が、海の幸を運ぶ理由
鯖江は福井平野と武生盆地の間に位置する、人口密度の高い工業都市だ。眼鏡フレームの生産で日本市場の96%を占める町として知られているが、私がこの町を見るとき、もう一つの顔が浮かぶ。日野川、浅水川、鞍谷川という三本の川が市を縦断し、山あいの河和田地区へと流れていく地形。その水脈は、日本海へと続いている。
福井県は越前漁港を擁する漁業県だ。鯖江市は海に面していないが、隣接する越前町、越前市との距離は近い。だからこそ、この町の食卓には、朝獲れの魚が届く。眼鏡職人の手と同じくらい、漁師の手が町の暮らしを支えている。
骨を取る手間を、誰かが引き受けた
サバエのサバは、その名の通り、鯖江に届く鯖だ。冷凍切り身で、骨がない。無塩。

これは、家の食卓に着地する形を、誰かが先に考えた返礼品だ。鯖を一尾買って、三枚におろして、骨を丁寧に取り除く。その手間を、生産者が引き受けている。届いた日の夜、冷蔵庫から出して、塩をふって、フライパンで焼く。20分で夜の支度が終わる。
600グラム、1.2キロ、1.8キロから選べるのは、家族の人数と、冷凍庫の余裕を考えた選択肢だ。一人暮らしなら600グラムを月に一度。四人家族なら1.2キロを二週間ごと。そういう現実的な食べ方が、返礼品の設計に反映されている。
鯖は、日本の食卓で最も身近な青魚だ。塩焼き、味噌煮、南蛮漬け、フライ。調理法は無限にある。骨がないから、子どもも食べやすい。高齢者も、箸で身をほぐしやすい。
米と、甘えびと、蟹で、季節を整える
鯖江の食卓を整えるなら、米も欠かせない。いちほまれやおしどり米は、福井県産の米だ。令和7年産の新米が届く。鯖を焼いた夜、その米を炊く。塩辛い鯖と、甘い米。その組み合わせが、日本の食卓の基本だ。

海の幸をもう一つ。越前産の冷凍甘えびは、小分けで選べる。500グラムから2キロまで。甘えびは、刺身で食べるのが最高だが、冷凍でも鮮度が保たれている。解凍して、醤油をかけて、ご飯の上に乗せる。それだけで、丼になる。
冬の食卓には、越前せいこ蟹を。タレが付いているから、解凍して、ご飯にかけるだけで海鮮丼になる。3人前、5人前から選べる。家族が集まる日に、この丼を出す。蟹の身の甘さが、冬の食卓を豊かにする。
漆器の盃で、晩酌を整える
鯖江は、眼鏡だけでなく、漆器の産地でもある。漆塗りの盃三つ組セットは、その町の手仕事を代表する品だ。色を選べる。毎晩の晩酌を、この盃で飲む。手に馴染む漆の質感。口に当たる縁の優しさ。そういう細部が、日々の食卓を変える。
鯖江の返礼品は、派手ではない。だが、家の食卓に着地したとき、その町の暮らしが、少しずつ見えてくる。眼鏡職人の手と、漁師の手と、漆職人の手が、一つの食卓を支えている。その関係性を、返礼品を通じて感じることができる。
