五城目の水、五城目の酒
五城目町は秋田市から北へ30キロ、山と田園に挟まれた町だ。東部の山間部から流れ出る馬場目川が、この町の水脈を作ってきた。私がこの町を見るとき、まず思うのは「水の町」ということだ。
町の中心を国道285号が貫き、その沿道には役場や商業施設が並ぶ。だが町の本質は、そこにはない。500年続く朝市(0・2・5・7のつく日)が開かれる中心部の賑わい、かつて5つの城が立っていた中世の地層、そして何より、山から流れ落ちる清冽な水——それらが五城目だ。
青浦城の純米吟醸は、その水で仕込まれた酒である。福禄寿酒造が手がけるこの酒は、無濾過原酒として、米と水と麹の対話をそのまま瓶に閉じ込めている。生酒だから、冷蔵で届く。開栓した時、かすかに立ち上る香りは、秋田の冬の空気そのものだ。

晩酌の盃に注ぐと、果実のような香りが鼻を抜ける。純米吟醸の透明感と、原酒ならではの骨太さが同居している。米の旨味が舌に残り、後味は辛口に引き締まる。冷やして飲むのが本来だが、少し温度を上げると、また違う表情を見せる。
町の歴史を名に刻む
酒の名前に注目してほしい。「青浦城」「赤浦城」「浦城」——これらは、かつてこの町に立っていた5つの城の名を冠している。1951年に町章が制定された時、浦城・岡本城・砂沢城・馬場目城・山内城が象徴として選ばれた。その歴史を、酒造りの現場で生かしている。
浦城のにごり本生は、同じ福禄寿酒造の別の顔だ。にごり酒は、米の粒子が残る。濁りの中に、米本来の甘さと力強さが詰まっている。「雪景色」という名は、秋田の冬を映している。豪雪地帯に指定されるこの町で、冬の夜長に飲む酒として設計されたのだろう。

赤浦城の1.8Lは、家族や友人と分かち合う量だ。1本で複数の夜を支える。冷蔵庫に常備して、その日の気分で温度を変えて飲む——そういう付き合い方ができる酒である。
水と季節の手当て
秋田の冬は厳しい。年平均降雪量が410センチに達する豪雪地帯だ。そうした環境で、人々は酒を飲むことで季節を乗り越えてきた。五城目の酒は、その営みの延長線上にある。
届いた酒を冷蔵庫に入れ、晩酌の時間に盃を傾ける。その時、あなたの食卓には、馬場目川の水が、五城目の冬が、そして500年の朝市の賑わいが、静かに着地する。
