鳥海山の麓、水と塩の町
秋田県南西部のにかほ市は、独特の地形に支えられた町だ。東に秀峰・鳥海山を控え、西に日本海を臨む。この山と海に挟まれた地で、豊富な水資源と海の恵みが、この町の産業と食卓を形作ってきた。
鳥海山からの清冽な水は、稲作を中心とした農業を育ててきた。一方、日本海の漁港からは、タラやズワイガニといった季節の魚が水揚げされる。この二つの産業が、にかほの食文化の根幹をなしている。
町は2005年に三つの町(仁賀保町、金浦町、象潟町)が合併して誕生した。秋田県で唯一のひらがな自治体として、その名を刻んだ。
室町時代から続く、小さな酒蔵の四季
この町で最も体現される返礼品は、飛良泉の山廃 FOUR SEASONSだ。創業は室町時代。小さな酒蔵が、にかほの四季を醸す。

山廃仕込みという古い手法で、鳥海山の水と地元の米を使い、季節ごとに異なる表情の酒を造る。冬の晩酌に、春の食卓に、夏の涼しい夜に、秋の月見に。同じ蔵の酒でありながら、季節によって味わいが変わる。それは、この町の四季そのものを飲むことだ。
小さな蔵だからこそ、米の選別から仕込み、熟成まで、手間をかけることができる。届いた時、ラベルを見れば、この町の歴史と風土が一本に詰まっていることに気づく。晩酌の時間が、単なる酒を飲む時間ではなく、にかほという町を知る時間になる。
米と、その周辺
にかほの米は、鳥海山の水で育つ。秋田県産あきたこまちやサキホコレといった品種が、この町の農協から出荷される。土づくり実証米として、丁寧に育てられた米だ。

白米で炊いて、その粒の立ち方を見る。冷めても硬くならない米は、おにぎりにしても、翌日の弁当でも、米本来の甘さが残る。この米があれば、おかずは最小限でいい。塩辛い漬物、季節の野菜の煮物、そして時には秋田由利牛のすき焼き用を少量、鍋に入れる。米が主役の食卓が、自然と整う。
海と山の恵みを、家の食卓へ
フローズンいちじくは、この町の果樹栽培の一面を示す。冷凍で届くため、解凍してそのまま食べるか、ヨーグルトに混ぜるか、煮詰めてジャムにするか。保存の手間がなく、季節を問わず、いちじくの甘さを家の食卓に呼び込める。
にかほの返礼品は、派手さより、実用性と風土の厚みを重視している。町の産業構造は、製造業が大きな割合を占めるが、食卓に届く返礼品は、農業と漁業、そして小さな蔵の酒という、この町の原風景を映している。それは、寄付者の家の食卓が、にかほという町とつながる瞬間を作るためだ。
