日本海と山に挟まれた、米と酒の町
由利本荘市は秋田県の南西部、日本海に面した広大な市だ。子吉川が海に注ぎ、その河口から内陸へ向かうと、笹森丘陵が市域の中央を占める。さらに南には鳥海山が控えている。この地形が、この町の食卓を決めている。
冬は特別豪雪地帯に指定される地域もあり、年間降雪量は300cm を超える。気温は-10℃を下回る日が珍しくない。こうした厳しい寒冷地だからこそ、米は引き締まり、酒は深い味わいを帯びる。江戸時代から本荘藩の城下町として栄えた歴史も、この風土の上に成り立っている。
寒冷地が育てる、粒立ちのいい米
秋田県産ひとめぼれは、この町の代表的な返礼品だ。通算5回特A等級を獲得した米で、寒冷地の短い生育期間の中で、粒が揃い、甘みが凝縮される。無洗米か白米か選べるのは、毎日の炊き方の手間を考えた配慮だ。

届いた米を開けると、粒の透明感が目に入る。炊くと、ほのかな甘みが立ち上り、冷めても硬くならない。朝の味噌汁の椀に、夜の漬物と一緒に、この米は家の食卓に自然に着地する。寒冷地の米だからこそ、毎日食べても飽きない。
同じく由利本荘産のつぶぞろいも、粒の揃いが特徴だ。品種の違いを食べ比べることで、この町の米作りの丁寧さが伝わる。

鳥海山の水が仕込む、純米酒
米があれば、酒がある。由利本荘には複数の蔵元があり、鳥海山の伏流水を仕込み水に使う。生もと仕込純米酒「鳥海山」は、その名の通り、この山の水で仕込まれた酒だ。生もと造りは手間がかかる古い製法で、乳酸菌の働きを活かして、深い味わいを引き出す。
晩酌の盃に注ぐと、米の香りが立ち、後口に山の水の清涼感が残る。冬の夜、熱燗にしても、冷やしても、この酒は季節の食卓に寄り添う。
天寿と雪の茅舎の飲み比べセットなら、同じ町の異なる蔵の個性を一度に味わえる。米焼酎ではなく、純米酒の奥行きを知る入口になる。
日本海の恵みも、忘れずに
活バイ貝は、由利本荘の日本海沿岸で獲れた貝だ。泥抜きされた状態で届くので、塩辛く煮詰めるか、酒蒸しにするか、台所での判断が活きる。冬の夜、バイ貝の身を爪楊枝でほじり出しながら、先ほどの純米酒を傾ける。そういう食べ方が、この町の食卓には自然に生まれる。
由利本荘の返礼品は、高級食材の見栄えよりも、毎日の家の食卓にどう着地するかを考えて選ばれている。米と酒と、時に海の幸。寒冷地の風土が育てた、素朴で深い味わいだ。
