三つの蔵が並ぶ町
龍郷町は奄美大島の東部、東シナ海と太平洋に挟まれた小さな町だ。人口は五千七百人余り。丘陵が多く、平地は限られている。その限られた土地で、サトウキビを中心とした農業が営まれてきた。
この町には黒糖焼酎の蔵が三つある。奄美大島酒造、町田酒造、山田酒造。いずれも龍郷町に本社を置き、地元産のサトウキビから黒糖を作り、それを仕込み水で溶かし、麹と酵母で発酵させ、蒸留する。その工程は、この島の気候と水と、職人の手によってのみ成り立つ。
私が推したいのは、じょうごと高倉の二本セットだ。奄美大島酒造の「じょうご」は25度、町田酒造の「高倉」は30度。度数の違いは、飲み手の好みと季節によって使い分けられる。冬の晩酌には高倉の濃厚さが、夏の水割りにはじょうごの柔らかさが活きる。

蔵の顔が見える、一本の焼酎
黒糖焼酎は、奄美群島でのみ製造が許される。泡盛のように米麹を使わず、黒糖と水と麹だけで仕込む。その製法は江戸時代から続く。龍郷町の三つの蔵は、それぞれ異なる水を使い、異なる麹菌を育て、異なる樽で熟成させる。だから同じ黒糖焼酎でも、蔵によって香りも味わいも変わる。
届いた瓶を手に取ると、ラベルに蔵の名が刻まれている。それは、この町のどの職人が、どの季節に、どの水で仕込んだのかを示す証だ。晩酌の時間に、その蔵の顔を思い浮かべながら杯を重ねる。それが、ふるさと納税の返礼品としての黒糖焼酎の本来の姿だと私は考える。
南国の果実と、焼酎の組み合わせ
この町の返礼品には、黒糖焼酎のほかに、奄美パッションフルーツや南国奄美のアボカドがある。パッションフルーツは酸味が強く、焼酎の水割りに搾り汁を落とすと、南国の香りが立ち上る。アボカドは、塩をふって焼酎のつまみにする。

また、奄美すもも酒とたんかん酒は、黒糖焼酎の仕込み技術を応用した、より甘めのリキュール。冬のデザートワインとして、あるいは炭酸水で割ってカクテルのように飲む。
龍郷町の返礼品は、決して豪華ではない。だが、この町の土地と職人の手が、一本一本に詰まっている。その重さを感じながら、家の食卓に迎え入れてほしい。