五ヶ瀬川が刻む、九州山地の懐
私は日之影町を、谷の町だと見ている。宮崎県の最北山間部、九州山地に位置し、東西9km、南北30kmの細長い領域の90%が山林。町の中央を五ヶ瀬川が東西に貫流し、その両岸に50~100mの切り立った断崖が立ち上がる。その上部に、階段状に耕地が拓かれ、大小の集落が張りついている。年平均気温15.5℃という冷涼さが、この町の産業と食卓を決めている。
鉱業の衰退後、この町が選んだのは農林業だ。かつて見立鉱山でスズを採掘していた時代は1963年に閉じた。その後、柚子、栗、きんかん、椎茸、釜炒り茶といった山間地の作物が、ゆっくりと根を張った。そして焼酎。この冷涼な谷間で、さつまいもと麦を仕込む蔵が、世代を重ねて酒を造り続けている。
無濾過の焼酎が、この町の手仕事を語る
無濾過御幣原酒は、38度の芋焼酎だ。陶器の瓶に詰められ、届いた時点で既に、この町の仕事の時間が感じられる。無濾過とは、仕込みから蒸留、貯蔵を経て瓶詰めするまで、微細な成分を取り除かない造り方を指す。つまり、蔵人の判断と手が、最後まで酒に触れている。

晩酌の盃に注ぐと、芋の甘さと、焼酎特有の香りが立ち上る。ロックで飲めば、冷たさが芋の甘みを引き締める。湯割りにすれば、香りが柔らかく広がり、秋から冬の夜長に、手のひらの温かさとともに時間が進む。この焼酎は、飲み手の季節と気分に応じて、その表情を変える。それは、蔵が毎年、同じ仕込みをしながらも、気候と素材の違いを読み込んで造り続けているからだ。
谷間で育つ和牛、食卓への着地
高千穂牛のこま切れは、800gの量感で、家の食卓に着地しやすい。この地域の和牛は、冷涼な気候と、山間地の良質な水、そして丁寧な飼育によって、霜降りの細やかさを持つ。こま切れという形態は、炒め物、すき焼き、鍋と、季節ごとの食べ方を選ばない。

秋口、焼酎をちびちび飲みながら、この牛肉を鉄鍋で炒める。塩と胡椒だけで十分だ。肉の脂が鍋に落ちて香ばしくなり、焼酎の香りと重なる。冬には、すき焼きの鍋に入れ、卵でとじる。春には、野菜と一緒に炒め物にする。同じ肉でも、季節と調理法で、その味わいは変わる。それは、この町の四季が、谷間の気候によって明確だからだ。
宮崎牛の焼肉セットも、ウデとバラの2種を各500gずつ、合計1kgで届く。焼肉は、この肉の脂の質を最も直接的に味わう食べ方だ。炭火か、家庭用の焼肉プレートで、素早く火を通す。肉の表面が色づいた瞬間が食べ頃。その瞬間を逃さない手の動きが、食卓を活気づける。
焼酎と肉、この町の冬支度
この町に寄付すると、焼酎と和牛が家に届く。それは、五ヶ瀬川の谷間で、冷涼な気候に向き合い、世代を重ねて仕事を続けてきた人たちの手が、あなたの食卓に届くということだ。焼酎の瓶を開け、肉を火にかける。その時間が、この町の時間と重なる。