盆地に霧が降りる町で、水と杉が仕事を作った
日田は、大分県の北西、福岡・熊本と県境を接する盆地の町だ。周囲を標高1000メートル近い山に囲まれ、春から秋にかけて朝夕に「底霧」と呼ばれる深い霧が立ち込める。その霧の中で、杉は育つ。
江戸時代、この町は幕府の直轄領として栄えた。1767年には日田代官が西国郡代に格上げされ、九州の支配所を統治する拠点となった。郡代支配下の支配地は最終的に16万石にも及んだ。その繁栄の中で、掛屋に指定された商人たちが蓄えた利益は「日田金」と呼ばれ、治水工事や川の整備に投じられた。
林業が栄えたのは、この地形と気候のおかげだ。年降水量1900ミリ弱、山間部では3000~4000ミリに達する雨が、杉と檜の生育を早めた。その杉を使い、日田下駄、漆器、木工業が生まれた。今も小鹿田焼、日田土鈴といった伝統工芸が息づいている。
焼酎に映る、この町の水と手仕事
日田限定の麦焼酎は、この町の顔だ。良質の水で知られる日田。井上酒造、クンチョウ酒造、老松酒造など、日本酒や焼酎の酒造業は古くからこの地に根ざしている。盆地の冷たい水、冬は1月の平均気温が4.2℃と九州の都市としては厳しい寒さ——そうした風土が、酒造りの条件を整えてきた。

晩酌の一杯に、この焼酎を注ぐ。杉の香りが立ち上る盆地の夜。その背後には、江戸から続く水運、代官の時代、そして今も山から流れ落ちる清水がある。
秋の食卓に、梨と肉を
日田梨のあきづきは、9月以降の届け物。盆地の昼夜の気温差が大きいからこそ、甘みが凝縮される。3キロの梨を家に迎えるのは、秋口の楽しみだ。冷やして、そのまま齧る。あるいは、皮を剥いて家族で分ける。

同じ食卓に、豊後牛の焼肉用も。黒毛和牛の赤身と霜降りが、秋の夜長の鍋を温める。梨の甘さと、肉の旨さ。盆地の水で育った両者が、一つの食卓に着く。
返礼品を選ぶ視点
この町から届く品を選ぶなら、水と杉、そして手仕事の痕跡を探すといい。サッポロのビールも、この町の工場で作られている。2000年から稼働するサッポロビール九州日田工場は、良質の水を求めてこの盆地に根を下ろした。
旅で訪れるなら、天ヶ瀬温泉の旅行クーポンで、三隈川沿いの湯に浸かるのも一つの道だ。しかし、この町の本質は、返礼品として家に届き、食卓に着き、晩酌の時間に開かれるものの中にある。
