山と川に囲まれた、仕事の町
多良木町は熊本県の南東端、九州山地の懐にある。町域の大半は山林で、中央を球磨川が東西に貫く。この地形が、かつての産業を決めた。
昭和20年代、この町は木材の集積・加工地として人吉盆地で最も賑わっていた。全国から買い付け人が訪れ、料亭や旅館が立ち並んだという。山から切り出した木を、川で運び、手で加工する。その仕事の流れが、町全体を動かしていた時代だ。
林業は衰退したが、この町の手仕事の文化は消えなかった。形を変えて、今も続いている。それが球磨焼酎だ。
焼酎の仕事——米を蒸し、麹を育て、仕込む
堕天使は、多良木町で作られる米焼酎である。米を蒸し、米麹を育て、水を加えて仕込む。その工程は、木を切り、乾かし、削る職人の手仕事と同じ質感を持っている。

焼酎造りは季節に支配される。冬の冷たい水、春の温度変化、秋の湿度——自然の条件を読み、手で調整する仕事だ。一本の焼酎が出来上がるまでに、何度も人の手が入る。
晩酌の時間に、グラスに注ぐ。米の香りが立ち上る。その香りの奥に、この町の山と川、そして仕事の時間が詰まっている。
他の選択肢——米、牛肉、そして宿
この町で寄付するなら、焼酎と一緒に考えたい品がある。
にこまるは、多良木町の米どころを代表する品種だ。均ちゃん農園から直送される米は、焼酎の原料と同じ土地で育つ。白いご飯として食べるのもよいが、焼酎の水割りの水として、この町の米を使う水を想像するのも悪くない。

あか牛の切り落としは、阿蘇の自社牧場で育った牛肉だ。焼酎の肴として、炭火で焼く。塩をふって、口に入れる。焼酎と肉——この組み合わせは、この地域の食卓の基本形である。
そして、もし泊まるなら、ブルートレインたらぎを選ぶ手もある。JR九州から譲り受けた車両を簡易宿泊施設に改装したもので、えびすの湯の入浴券が付く。かつて料亭や旅館が栄えた町の歴史を、別の形で体験する宿泊だ。
多良木町への寄付は、焼酎一本から始まる。その一本が、この町の山と川、仕事の時間、そして人の手を、家の食卓に運ぶ。