港町の食卓は、海の時間で動く
佐世保は、明治の軍港から始まった町だ。東郷平八郎が測量に訪れ、天然の良港として鎮守府が置かれ、戦後も海上自衛隊と米軍基地が今も港に艦船を並べている。だが私が佐世保の台所を想うとき、その歴史よりも先に浮かぶのは、九十九島だ。
北松浦半島の西側沖合に点在する無人島の群れ。その海域で獲れる白身魚、貝、海の幸が、この町の食卓の中心にある。梅雨が長く、高温多湿で降水量も多い気候。冬も対馬海流の影響で温かく、一年を通じて海が豊かに物を育てる。
五島列島の天然魚鍋は、宇久島の鮮魚を白身魚の切身で仕立てた、約3人前の海鮮鍋だ。届いた箱を開けると、真空パックに詰められた切身が、季節の白身魚の顔ぶれを教えてくれる。鍋の季節に、昆布を敷いた鍋に入れ、塩と酒で静かに火を通す。身が透き通り、甘みが立つ瞬間がある。その時間が、九十九島の海の時間そのものだ。

塩漬けの手仕事、冬の常備菜へ
西京漬けと干物のセットは、秘伝の仕込みで知られた品だ。サバ、赤魚、ひらす、金目鯛、アジ—北松浦の沖で獲れた魚たちが、塩漬けと西京漬けに仕立てられている。朝、焼き網に乗せて火にかけると、塩辛さと味噌の香りが台所に満ちる。ご飯の上に乗せ、大根おろしを添える。この食べ方は、佐世保の家々で何十年も繰り返されてきた。

干物は、保存の知恵でもある。梅雨から夏にかけての集中豪雨で水害が繰り返される土地だからこそ、塩漬けと干物は、季節の変わり目に台所に常備される。冷凍で届くこのセットは、そうした土地の食べ方をそのまま家に運ぶ。
貝の季節、九十九島の恵み
九十九島産のあわびとさざえセットは、春から初夏にかけて、この町の食卓に欠かせない品だ。あわびは600g〜1.4kg、さざえは600g〜の量で届く。あわびは、薄く切って酒蒸しにするか、バター焼きにする。さざえは、壺焼きで、塩辛い磯の香りを引き出す。
九十九島の有人島・高島はちくわが名産だが、この海域全体が、貝類の宝庫でもある。冬の寒さが浅い北松浦の海は、貝を引き締め、身を甘くする。届いた貝を、その季節に、その土地の食べ方で調理する。それが、ふるさと納税の返礼品が本来持つ意味だと、私は考えている。
佐世保に寄付することは、港町の台所を、自分の台所に迎え入れることだ。
