盆地に湯が湧き、茶が育つ町
嬉野市は佐賀県西部、周囲を緩やかな山に囲まれた盆地だ。古くから温泉が湧き、江戸時代には茶の栽培が始まった。塩田川が感潮河川として満潮時に逆流する地形が、かつて「塩田」という地名を生んだ。今も嬉野温泉には年間100万人以上が訪れ、塩田津は重要伝統的建造物群保存地区として長崎街道の宿場町の面影を残している。
この町の産業は観光と農業。米、麦、茶が育つ盆地で、近年は野菜類の出荷も盛んだ。そして、その農地を支える黒毛和牛——佐賀牛が、この町の食卓を支えている。
切り落としで、毎日の晩酌に
佐賀牛の切り落としは、返礼品の中でも最も台所に着地しやすい形だ。A4等級の黒毛和牛を、筋や脂を取り除いた状態で届ける。

500gか1kgか選べるのは、家族の人数と冷凍庫の余裕を考えた配慮だろう。届いたら、まず一度に全部を使おうとは思わない。小分けにして冷凍室に寝かせておく。週に2、3度、夜の支度の時に一パック取り出す。すき焼き、牛丼、炒め物——切り落としはどの調理法にも応じる。脂が適度に入っているから、弱火でじっくり炒めると、肉の香りが台所に満ちる。
A4等級というのは、見た目の霜降りと肉質の両立を示す。この町で育った牛だからこそ、地元の飼料と水、そして手間がその肉に宿っている。毎日の食卓に、その手間が一皿分、届く感覚だ。
温泉の湯どうふ、地酒で味わう
嬉野温泉の名物「湯どうふ」は、温泉水で豆腐をゆでたもの。温泉に含まれる成分が豆腐をとろりと溶かし、湯が白濁する。この独特の食べ方は、この町の温泉と食文化が一体であることを示している。
東一の純米吟醸は、地元の五町田酒造が仕込む酒だ。晩酌の相棒として、あるいは温泉旅館での夜の一杯として、この町の水で育った米と酵母が、盆地の夜気の中で香る。

炭火で焼いたうなぎ、季節の野菜
炭火焼のうなぎは、手焼きの仕事が見える返礼品だ。タレが付いているから、温めるだけで食卓に上る。米の季節、茶の季節、野菜の季節——この町の四季の中で、うなぎの脂は何度も食卓に登場する。
盆地の町は、温泉と茶で知られるが、その奥には農業の営みがある。佐賀牛の切り落としは、その営みの一部を、毎日の晩酌に変える。