豊前の水と米が出会う場所
私がみやこ町を訪ねるなら、まず酒蔵の門をくぐりたい。福岡県の北東部、京都平野の田園地帯に位置するこの町は、かつて豊前国の中心地だった。その歴史の重みと、今川や祓川が流れる水脈が、酒造りの条件を整えてきた。
九州菊の吟醸は、その仕事の一つの形だ。720ml の四合瓶に詰められた清酒は、地元の米と水を使い、季節ごとに仕込まれる。吟醸造りは、米を磨き、低温で時間をかけて発酵させる。その過程は数週間に及ぶ。晩酌の盃に注ぐとき、その背後には蔵人たちの手と目がある。

同じ蔵から九州路という一升瓶も届く。こちらは家族で、あるいは友人と囲む量だ。冬の夜、温めて飲むのもよし、冷やして夏に飲むのもよし。返礼品として届いた時点で、その酒がどの季節に、どの食卓に着地するかは、受け取る側の手に委ねられている。

焼酎と米菓子、町の手仕事の広がり
みやこ町の返礼品は酒だけではない。麦焼酎の豊前海は、別の仕事の形を示している。焼酎は蒸留酒だ。米や麦を仕込み、麹を使い、蒸留する。その工程は日本酒とは異なり、より高い温度で、より短い時間で完成する。晩酌の相棒として、ロックで、水割りで、その飲み方は日本酒より自由だ。
食卓に届く返礼品は、酒だけではない。米粉の焼き菓子詰め合わせは、小麦粉を使わず、米粉で八種類を焼き上げたものだ。勝山米という特産品を持つこの町だからこそ、米を別の形で活かす工夫が生まれている。白砂糖も使わず、お酒も使わない。素材の選別と配合の手間が、小さな焼き菓子一つ一つに詰まっている。
三つの町が2006年に合併してみやこ町となった。豊津、犀川、勝山。それぞれの地域で、それぞれの産業が続いてきた。農業が盛んで、米が育つ。その米から酒が生まれ、菓子が生まれる。国道201号が東西に延び、仲哀峠を越えて筑豊と京築を結ぶ交通の要所でありながら、この町の仕事は静かに、季節ごとに続いている。
