江の川沿いの、狭い田んぼ
島根県の中部、邑智郡の川本町。中国山地に囲まれたこの町を、江の川が北東から南西へ貫く。地形が険しいというのは、つまり平地がほとんどないということだ。江の川が長い年月をかけて削った、わずかな土地に、人々は家を建て、田んぼを作ってきた。
私がこの町を見ると、まず思うのは「限られた場所で、丁寧に」という営みだ。広大な平野で大規模に作る米とは違う。狭い谷間の、段々になった田んぼ。水は江の川から引き、季節ごとに手をかけて育てる。そういう米だ。
川本町のコシヒカリは、そうした風土の中で作られている。令和7年産の新米が、2キロ単位で届く。精米されたままの状態で家に着くから、開けたその日から炊ける。白い粒が揃った、素直な米だ。

食卓に着地させる、米の使い方
2キロというのは、一人暮らしなら2週間分、家族なら1週間分くらい。小分けにして冷蔵庫に保存すれば、いつも新しい状態で食べられる。毎日の朝食に、昼の弁当に。特別な調理は要らない。塩むすびにしても、白飯のままでも、米そのものの甘さが静かに出る。
コシヒカリという品種は、粘りと甘みのバランスが特徴だ。川本町の、限られた土地で丁寧に育てられた米だからこそ、その特性がはっきり出る。冷めても硬くなりにくいので、お弁当向きでもある。
4キロ(2キロ×2)の返礼品もある。家族が多い、あるいは米をよく食べる家庭なら、こちらで一度に届けてもらい、2キロずつ冷蔵庫に入れるのが現実的だ。精米の鮮度を保つには、小分けと冷蔵保存が何より大事。

石見銀山の時代から、この土地で
江戸時代、この地域は石見銀山の影響で天領となっていた。明治には邑智郡役所が置かれ、地域の中心地として機能してきた。昭和初期には三江線が到達し、戦後は高等学校が開校し、やがて「音楽の町」を宣言するまでになった。小さな町だが、歴史の重みがある。
そうした町の、今の営みが米作りだ。派手ではない。だが、毎年、季節ごとに、江の川の水を引き、田んぼに向き合う農家がいる。その米が、寄付の返礼として家に届く。それは単なる商品ではなく、その土地で生きる人たちの営みの一部を、食卓に迎え入れることだ。
