入り組んだ海が、この町の顔をつくった
那智勝浦町の東側は、典型的なリアス式海岸だ。海岸線が激しく入り組み、いくつもの天然の良港を抱えている。特に勝浦の港は、狼煙半島に囲まれた入江の奥にあり、中ノ島という島がさらに外敵を防ぐ。こうした地形が、南紀随一の良港を生み出した。黒潮の影響で気候は温暖。この条件が、町の産業と食卓を決めている。
港があれば、漁師がいる。漁師がいれば、鮮魚が毎日、家に届く。那智勝浦町の返礼品を見ると、その関係がはっきり見える。海に面した町だからこそ、生きた伊勢海老が、刺身用のマグロが、藁焼きのかつおが、寄付の返礼として家に着く。これは観光地の土産ではなく、地元の食べ方そのものだ。
刺身用マグロ、朝獲れの鮮度で家に
生びんちょうまぐろの刺身用サクは、この町を代表する一品だ。約400グラムのサクが届く。びんちょうまぐろは、本マグロより脂が少なく、淡白で歯切れがいい。刺身用と指定されているのは、漁港で即座に処理され、冷凍で送られてくるからだ。

届いたら、冷蔵庫で半日かけてゆっくり解凍する。急ぐと身が水っぽくなる。解凍後、包丁を温めて、一気に切る。切り口が透き通っていれば、鮮度が生きている。醤油とわさび、それだけで十分。港町の食べ方は、素材を邪魔しない。晩酌の一皿として、ご飯の上にのせて丼にしてもいい。冬から春にかけて、脂がのる季節に申し込むと、より満足度が高い。
柑橘の季節、有田みかんと春の珍しい品種
山と海に囲まれた町だから、果樹も育つ。有田みかんは、3~10キロから選べる。訳ありとあるが、これは農家直送の現実だ。形が不揃いだったり、小さかったりするだけで、味は変わらない。むしろ、流通を経ないぶん、採ってから家に着くまでの時間が短い。

冬から春にかけて、この町の柑橘は多様になる。カラマンダリンという春の品種も返礼品にある。南津海(なつみ)という名で呼ばれることもある。春先に出回る珍しい柑橘で、甘みが強く、皮が薄い。家族で食べるなら、この季節に申し込んで、春の食卓に並べるといい。保存は冷暗所で、風通しのいい場所なら2~3週間は持つ。
伊勢海老と焼酎、年末年始の食卓へ
活きた伊勢海老は、約300グラム、1匹。年末年始の期間限定で漁師から直送される。活きたまま届くので、到着後は冷蔵庫の野菜室で保管し、できるだけ早く調理する。塩ゆでにするか、味噌汁の具にするか。身の甘さが引き立つ。
晩酌には、本格米焼酎「熊野水軍」の一升瓶を合わせたい。この町で造られた焼酎で、米を原料にしている。ロックで飲むと、米の香りが立つ。水割りにすると、食事の邪魔をしない。冬の夜長に、少しずつ飲み進める酒だ。
返礼品を選ぶ視点
この町の返礼品は、季節と漁期で選ぶのが正解だ。マグロは通年だが、伊勢海老は年末年始。柑橘は冬から春。焼酎は季節を選ばない。温泉宿泊券も用意されているが、この町の本質は『食べ物が家に届く』ことにある。寄付額で選ぶのではなく、自分たちの食卓に何が必要か、季節は何か、を考えて申し込むといい。
港町の返礼品は、流通の時間が短い。だから、スーパーでは出会えない鮮度が家に着く。それが、この町に寄付する意味だ。
